「こ、これは・・・ネームって、こんな感じなの?」
ボクは華やかさの感じられない、四人の女子高生に伺った。
「漫画雑誌の新人編集者は、漫画家の汚い字や何が描いてあるか解らん絵を、理解するところから入るっス」
原田妹が、不機嫌そうな顔で言った。
「じ、自分でも汚いって解ってるんだ?」
「うっさい、いいから早く読め!」「わ、わかったよ」
ボクは、5ページの漫画に目を通す。
それなりに漫画を読んできたので、それなりにだが内容は解った。
サッカー漫画で、少し少女漫画とか同人誌寄りの話だが、ストーリーに問題は無さそうだった。
「う、うん。いいんじゃないかな?」
「なにその上から目線」「金も払わないクセに偉そう」
「ここ、とーぜんおごりですよね?」
話を聞いていたのか、他の三人もボクを糾弾する。
「な、何でそうなる? オレは原田さんに依頼したのであって、キミらの分はキミら自身で・・・」
「なに言ってるっすか? 漫画の原稿料は、そんなに安くないっス。コイツらにも原稿仕上げるの手伝ってもらうから、全員にもおごるっス」「わ、わかったよ」
予想通りカレー四人前は、ボクがおごるハメになった。
「では、さっそく始めるっス」
「しゃーない」「メシおごってもらったし」「やるか」
原田妹の号令で、皆が漫画用原稿用紙の枠線引きや、ペン入れに入った。
「オイオイオイオイ、まさかここで漫画を描くのかよ?」
「ん? 勉強は禁止だケド、漫画を描くのは禁止じゃないっス」
「さらに質が悪いわ! カレー屋でペン入れする人間が、どこにいるか!」
ボクは思わず、声を荒げた。
「でも、仕上げる場所が」「家じゃダメなのか?」「気分が乗らないっス」
わがままを言う、原田妹。
「しゃーない。カレー食ったらウチへ来い」「ええ!」
「汚いアパートだが、四人くらいは座れる」
ボクは、男友達にでも言ってる気分で提案した。
よくよく考えたら、ボクはしがないニートで、彼女たちは年下の女子高生だった。
「え、えっと、つまりその・・・キミたちが良ければの話だが?」
「も、もちろん行くっス。兄貴以外の男の部屋がどうなってるか、興味あったっス」
即答だった。しかも、何やら邪な動機も感じられる。
しかし提案したのはボクで、彼女たちは断らなかった。
カレーを食べ終えた女子高生たちは、ボクの家に向かった。
「そのスプレーはなにかな?」
ボクは原田妹に質問した。
「これは、せー・・・じゃなかった。たんぱく質を検出する液体が入ってるっス」
「たんぱく質を検出して、なにをしようと言うんだ?」
「そ、それは、男の人の普段の生態を知るため・・・」
「帰れ」
ボクは、本気でそう思った。