「じょ、じょーだんっスよ。やだなあ」
原田妹は言ったが、ボクには冗談には聞こえなかった。
「まあ、オレから誘ったんだ。ただし、中は荒らすなよ?」
釘を刺して中に入れたが、四人の女子高生探偵は本棚の奥や、タンスの向こうから、本や映像コンテンツを探し出す。
「なんか、割と普通っすね。これじゃベタ過ぎて、逆に使えないっス」
「人の家に上がって、散々荒らしておいて、何を言ってやがる」
彼女たちから取り上げた本などを、台所に持て行って流し台の下に隠す。
「おっ、こっち来てみ、原田」「最後の砦、パソコンっすか」
「動画ファイルの拡張子で内部検索かけたら、こんな動画やこんなのまで」
「ほほーう。お兄さん、やっぱ変態っすね」
「グギャアアーーーッ! 止めろォ、お前らぁ!」
ボクはパソコンの前に回り込んで、画面に表示された動画やファイルを消した。
「鬼か! 悪魔か! やっぱお前らなんか、家に上げるんじゃなかった」
ボクが心底後悔していると、原田妹が言った。
「これが、お兄さんの作った、ネット漫画のサイトですか?」
パソコンの画面には、ボクがホームページ制作ソフトで作った、ネット漫画雑誌が表示されていた。
「あ、ああ。タイトルも含めて、まだプロトタイプだけどね」
「そうっスか。でもまあ、それなりに漫画雑誌には見えるっスね」
「実際には、ただのホームページなんだが」
「それじゃあ、まずは雑誌のタイトルから決めてみるのは、どうっスか?」
「そうだな」「なにそれ、面白そう」「やっぱタイトル大事っしょ」
女子高生たちは、ずいぶんとやる気だった。
「で、お兄さんは雑誌の名前、何か考えてあるんスか?」
「インターネットマガジンDA王・・・なんてどうかな?」
「DA王っスか? 正直、『ダ』ってイメージ悪くないっスか?」
「駄作とか、駄菓子とか、駄目とか、ネガティブなイメージっしょ」
「た、確かに・・・」
ボクのアイデアは、いきなり却下された。
「でも、インターネットマガジンってのは悪くないっス」
「副題はともかく、本題を決めないと・・・」
「ちなみに、この雑誌の方向性はどうなんスか? やっぱ、少年誌で行くっス?」
「ボクが読んできたのが、少年漫画だったからね。基本はそっち路線かな」
「お兄さん的には、この雑誌に企業の漫画を連載させたいんっスよね?」
「最終的にはね」「少年漫画で企業っていうと、車とかバイク、家電っスか」
「うわあ。わたし、車とか描くの苦手ェ」「バイクなんてもっての外っしょ」
確かに少女漫画に載ってる車やバイクの絵の完成度は、低い気がした。
「化粧品とかにしない?」「エステとかさ」「それを少年誌でか?」
ボクは腕を組んで悩んだ。
「まあ今日のところは、漫画を完成させるっス」
「確かに今日は、漫画を描きに来たワケだしね」「やるっしょ」
「企業とか考えるのは、これからで十分・・・か」
ボクは目の前の漫画制作作業を、手伝う事にした。