「オレも多少は、漫画を分かった気がするよ。何ができて、何ができないのか」
すると原田妹に、鼻で笑われた。
「アハ、何言ってるっスか。漫画の道はそんなに簡単には解らないっスよ」
「だ、だから多少はって言っただろ」
ボクがむくれてると、原田妹に質問された。
「ところでお兄さんは、どうしてネットで漫画雑誌を創ろうと思ったっスか?」
「んー、最初はヒマつぶしにやってみようと思った」
「な、なんスか、そのあまりにテキトーな動機は」
原田妹は、ガラスのテーブルに身を乗り出してきた。
「もっとこう、まともな動機は無いっスか?」
「何かをやろうとする動機なんて、そんなモンだろ?」
「まあ、ある意味正直っスねえ」
パーカー姿の女子高生は、再び元の姿勢に戻った。
「ところでお兄さん的には、ネット漫画雑誌に企業の漫画を載せたいんスか?」
「そうだね。企業の商品とかサービスを、主人公たちが楽しそうに使ってる漫画を連載するのが理想かな」
「それって簡単じゃないっスか? 例えば知り合いのお花屋さんに頼んで、そこの漫画を描けばいいんスよね?」
「いや、たぶん無理だよ」「え? どうしてっズか?」
鼻声の女子高生は、スがズになってた。
「漫画家と契約して、漫画を連載するんだ。長期的に相当な資金が必要になるよ」
「た、確かにっス」
「アシスタント料も引っくるめて、漫画家に利益が出るようにしないといけない。雑誌運営側も黒字が望ましい」
「つまりは、かなりの大企業じゃないと、お金が払えないってコトっスか?」
「そうなるね。広告費の限られてる小さな街工場や、小売店レベルには無理だろう」
ボクは資料や自分の考えをまとめた、ノートパソコンの画面を見せた。
「お、お兄さん、ノートも持ってたっスか?」「ネットの仕事で多少は稼げたんで、中古を買ったんだ」「どれどれ・・・?」
原田妹は、ボクがまとめた資料に目を通す。
「なる程っス。でも大手企業相手だと、大変そうっスね?」
「大変なんてモンじゃないよ。最初は話すら聞いてもらえないだろうから、まずはネット漫画雑誌の知名度を上げて、有名にならないと」
「この、『ネット漫画雑誌のブランディング化』ってヤツっスね」
「雑誌に魅力が無いと、育てた漫画家に逃げられちゃうからね」
「そりゃあ漫画家的には、有名な雑誌で連載持ちたいっス」
とりあえず囲えそうだと思っていた漫画家に、キッパリと言われた。
「ちなみにキミは、プロ漫画家志望なの?」
「えっと、実はまだ決めてなかったんスよ」「そうなんだ」
「でもお兄さんの話を聞いてみて、ネット漫画雑誌に連載するのもアリかなって思ったっス」
ボクは心の奥で、ガッツポーズを決めた。
「ちなみに・・・他の三人はどうかな?」
「たぶん、同人活動が楽しけりゃ良いって感じっスよ。プロになる気は、無いと思うっス。やっぱプロ目指すのって、厳しいっスから」
結局のところ、『覚悟』の問題だと思った。