千鳥歩く
ボクは、自ら大事なモノを壊してしまった。
それは、子供のころから大人になるまで、ある程度の頻度で繰り返してきた行為ではあった。
例えば、オモチャだったり、部活や塾を辞めたり、友達との関係だったりだ。
だが今回、決定的に違ったのは、自分が真剣になって取り組み、人まで巻き込んだ結果、それなりに形になっていたモノだったからだ。
「結局、アイツらが卒業したら、消えてしまうモノなんだ。そんなに未練に思うモノでもなかろう?」
ボクは、半年ぶりくらいに、ビールを飲んだ。
酒の量販店で、500ミリの缶を3本買って、ボロアパートに帰って飲み干す。
「そうだな。しばらく、旅にでも出るか?」
ボクは、なるべく夜遅くに駅へ行くと、電車に乗った。
暗い中を、警報機やら車の明かりやらが、後ろに流れて行く。
「ついこの間まで、けっこう上手く行ってたのに……なんでかなあ?」
酔っていたのと、精神的に疲れていたのと、寝不足で全然頭が回らない。
「電車なんかに乗って、どうするんだ? とりあえず、街の中心でビジネスホテルでも取って、寝よう。それからのコトは、そこで考えよう」
ボクは、ビジネスホテルまでのミッションを実行した。
街の中心は繁華街で、多くのビルが建ち並び、ビジネスマンたちが往来する。
財布とスマホ以外は、何一つ持たずに出てきたボクは、ビジネスホテルに部屋だけ取って、夜の街へと繰り出した。
「さて、また何か飲むか? 何がいいかな?」
とは言っても、そんなに持ち合わせは多く無い。
ボクは、焼き鳥屋で焼き鳥を買って、別の店で手羽先を買う。コンビニでビールと酎ハイと、ハイボールを何本も買うと、ビジネスホテルに帰った。
「ここの砂肝、めちゃくちゃ旨いな。ぼんじりは、コンビニのが旨い気がする」
焼き鳥を味わいながら、酎ハイとハイボールを開ける。
「手羽先は、ここの店の塩コショウが効いたのが、一番旨いよな?」
ビールには、濃い目の味付けがあった。
急に頭に、酔いが回って来た。
「はうぐ……流石に、飲み過ぎたか?」
ボクは、ベットに倒れ込む。
「ま、そうでもないか?」
ぼんやりとする、意識。
日々、プレッシャーを感じていたのだろうと、この時初めて実感する。
「ま、いいか。終わったものは、終わったんだ。今さら、どうにもならん」
ボクはそのまま、寝てしまった。