2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
市川さん その日、ボロアパートに帰ると、ボクのパソコンに大量にメールが届いていた。 その多くは、今日行った企業である、総合スポーツ用品ショップからのモノだ。 「やっぱ、大手企業ともなるとスマホより、パソコンにメールを入れてくるのか。ボクが居な…
契約 「このサッカー漫画、アタシ知ってる。友達に勧められて読んでみたのよ」 「スノボサムライも、面白いですよ。我が社のボードを使ってもらうのも、ありじゃないですか?」 会議に参加していた、各部署の責任者からも、意見が上がった。 「わたしも、サ…
経営者の判断 「悪いが、経営者は理想だけでは出来ないのでね」社長は言った。 「漫画が人気なのは解かる。本当に人気のある漫画は、それこそ世の中の常識すら変えてしまう。けれどもそれは、ほんの一部の漫画に過ぎない。ごく少数のエリート漫画家が書く漫…
企業会議 「それでね。一度ウチの会議に出て、頭の固い人たちを説得して欲しいわけよ」 「え?」「その……簡単に言うと、上が納得してないってコトですか?」 「ま、まあ、はっきり言っちゃうとね」宇津井さんは、頭を掻いた。 「なあ、どうするよ、オイ」「…
高くそびえるビルに、気後れしているボクを他所に、夜吸さんはズカズカと中へと入って行った。 スポーツ用品企業 「本日、宣伝広報課の宇津井さんと、漫画の広告案件で予約をした夜吸です」 「夜吸さまですね。本日、十時半からのご予約となっております。こ…
企業漫画と数字 「企業にとって、自社の商品、サービス、店舗を宣伝するのは、当たり前の行為だ」 ドリンクバーを汲みに行った夜吸さんが、戻ってきて言った。 「街の小さな飲食店や、小売り業ならいざ知らず、大手になればなる程、多額の広告宣伝費をかけて…
交渉術 結局、漫画にしろ芸にしろ、クリエイティブなモノがいきなり安定っした収益を上げるコトなど、ほぼ無いのだ。 「地道に、今あるコンテンツを収益化して行くしかないんだろうな」 ボクはファミレスから帰ると、久しぶりに就活の時に使ったビジネススー…
白咲 花 私に天使が舞い降りた!より ここ数日、家のネット回線が繋がらなくなり、ブログの更新もできなかった。 原因は、電柱の配線をカラスか何かがかじったから、というのが理由のようだ。 ヒマだったので、『わたしに天使が舞い降りた!』より、白咲 花…
漫画の可能性 佐藤のサッカー漫画は、女性にはキャラ人気で、男性にはサッカーがちゃんと描いている事で人気になっていた。 「お前さあ、これだけ人気の漫画を抱えてるんならよ。少しは収益化を考えねえとマズいだろ?」 「ユニホームロゴのスポンサー募集は…
漫画と金儲け 漫画:萩原さん、原案:ボクの『ヴァンパイア探偵』は、かなりのヒットとなった。 「やっぱ探偵ものって、ある程度の需要があるとは思ってたケド、予想以上の反響だね」 萩原さんが、機嫌良さそうに笑った。 「主人公が色白の優男で話にあんま…
ヴァンパイア探偵 夕焼けで紅く染まる公園は、まだ子供たちのにぎやかな声が聞こえてくる。 「相談……ってやっぱ、漫画のコトだよね?」 ボクは、萩原さんに問いかけた。 「そ、そうなんだ。スランプって言うか……さ。大野の言葉通りでしゃくだケド、元々あた…
報告会 実は、単なるホームページに過ぎない、ネット漫画雑誌ではあったが、雑誌の相乗効果は確実に存在した。 一つの漫画のファンが、他の漫画も読み、さらに多くのファンを獲得したのだ。 「とくに、佐藤のサッカー漫画の勢いが、凄まじいな。元々少年誌と…
ファンタジーと株式 「うおお、なんかSNSに、オレの漫画のキャラ絵が投稿されてっぞ?」 「い、いきなりかよ。確かに女性受けを狙ってはみたが」 佐藤もボクも、予想外の反応にたじろいでいると、スマホに連絡があった。 「山口さんからだ。なんだろう?」「…
Fラン大生の共同作業 ボクと佐藤は、連日のようにストーリーを練り、キャラを考え、ネームを突き詰めた。 「ここは、こんなキャラがいいんじゃないか?」 ボクがラフで、キャラを描き上げる。 「おお、いいんじゃないか? つか、お前もやっぱ、けっこう描け…
女子高生と漫画 「ねえ。振り込まれるお金って、どう分配されるのかな?」 萩原さんが、マンションの萩原さん自身の部屋で言った。 「そんなコト、知らないっスよ。決めるのは、お兄さんっス。もしかして萩原、自分が総取りできるとでも思ってたっスか?」 …
共同作業 久しぶりに、ボクのアパートにムサい面子が揃った。 「じゃあさ、佐藤。受け売りだケド、ネームをブラッシュアップしていくぞ」 「えええ!? これじゃ、ダメなのか?」 「う~ん。ダメでは無いが、もっと良く出来ると思うぞ?」 「マジ?」「意外…
ニートの決意 「こいつは、オレのFラン大学時代の友人で、今はニートの佐藤って言うんだ」 「前に、ニート舐めるなって、叫んでた人っスね?」 「え、Fランは要らんだろ? ニ、ニートってバラすな! 普通に大学の同級生だったって紹介しろ!」「わ、悪い悪い…
漫画の報酬 次の日、ボクは佐藤を引き連れて、芽美たちと会った。 場所は、コンビニのフードコートだった。 「もう、店員さんとも、顔なじみだな」 「ところで、お兄さん。また、夜吸氏と会ったっすか?」 「ああ……どうして知ってるんだ?」 「それがさ。乃…
過去 自動ドアは、耳慣れた入店音を奏でながら開く。 入って来たのは、髪の長いグラマラスな女性だった。 「あ、あれ? 末依先生?」 コンビニに入って来たのは、芽美たちの担任である末依 乃梨先生だった。 「……え?」末依先生は、ほんの僅かだけ驚きを見せ…
漫画の報酬 「いやいやいやいや。フリーランスなんて、頭の悪い兄ちゃんか、将来終わってるオッサンしかいねえモンだろ? 女なんてマジでいんの?」 夜吸さんは、差別と偏見のかたまりのような発言をした。 「フリーランスって言っても、漫画家の場合はそん…
サッカー漫画 学校を出たボクは、流石に芽美たちと一緒に帰るワケにもいかず、そのまま一人で家路に付いた。 「また、コンビニにでも寄って行くか。夜吸さんか佐藤辺り、来てないかな?」 ボクは、やたらと出会いの多い、いつものコンビニに寄った。 「あ、…
クレーマー 「じ、実はですね。彼女たちは、ボクのアパートで、漫画を……」 「それは解かっています。ですが、世間はそうは見ないでしょう?」 末依 乃梨は、極めて冷静に言った。 「集まる理由が漫画制作というのも、問題でしょうね。世間に認知されてません…
乃梨ちゃん IT企業の漫画は、少しだけ手直しはあったものの、OKを貰えた。 「やったあ、これでわたしも、漫画家デビューかな?」 手放しに喜ぶ、萩原さん。 「今度はネームも、ちゃんと自分で描くっスよ?」 「わ、わかってるって、原田。うっさいなあ」…
納品 一週間後、萩原さんが描いた10ページにも及ぶ企業漫画が、完成した。 「ま、まさか、余裕で間に合うとはな?」 ボクも含め、全員が予想外だった。 「イリア氏がフランスで、仲間を募って分業してくれたおかげっスね」 「で、どうかな? これで出して…
締め切り 次の日、市川さん以外の女子高生全員が、ボクのボロアパートに集合してくれた。 「キ、キミたちが、怒っていることは解っている。これからボクが、こっ酷く叱られるのも、重々承知の上だ。だけど、聞いて欲しい……」 「そんなヒマはないっス」「そ、…
ドリーマーズ・アゲイン ボクはけっきょく、逃げなかった。 「これは……究極に卑怯な選択だな」 彼女たちともう一度、ネット漫画雑誌を作れるという、自分勝手で捨ててっしまった夢を、ボクは自分からは一切動かずに、再び手にしたのだ。 「ニートのオレらし…