共同作業
久しぶりに、ボクのアパートにムサい面子が揃った。
「じゃあさ、佐藤。受け売りだケド、ネームをブラッシュアップしていくぞ」
「えええ!? これじゃ、ダメなのか?」
「う~ん。ダメでは無いが、もっと良く出来ると思うぞ?」
「マジ?」「意外とマジ……たぶん、行ける」
ボクは、芽美に言われたコトを思い出しながら、改めてネームを見る。
「まず、主人公の登場シーンだケドさ。やっぱ、コマ抜きでドーンと登場させた方がいいとおもうぞ?」
「そうだな……言われてみれば、そっちのがいい気がする」
「それに、主人公の目的ってなんだ?」「な、なんだって、言われても?」
「まあ、そうだよな。でも、芽美が言うには、読者に語る語らないは別にして、決めておいた方がいいみたいだぞ?」
「フ~ム、確かに人生の目標があった方が、いい気はするな?」
「オレが思うに、登場人物や組織ごとに、目的があった方がいいと思う。敵が戦争をする目的すら解らない、ダメなアニメとかあるからな」
「ウム。確かにその方が、リアリティが出るのかもな?」
「他には、何かあるか?」「そうだなあ……」
佐藤は意外にも、従順と言える程ボクの意見を聞いた。
「とりあえず主人公の目的は、『仲間集め』だ。プロのサッカー選手が経営するとは言え、財政的に不安定なチームに、人材を集めるのが仕事だろう」
佐藤は、サッカーの知識については良く知っていた。
「お前がサッカー好きなせいか、芽美のサッカー漫画と比べても、リアリティについては上くらいに思えるな」
ボクは、率直にそう感じた。
「だが、キャラがまだ弱い気がするな?」佐藤は、自ら弱点を指摘する。
「ああ。流石にそこは、芽美の漫画に比べ、劣っている部分だな」
「どうする……いい方法は無いのか?」「あるぞ」ボクは、即答した。
「実在のサッカー選手をモデルに、アレンジするんだ。もちろん、モロパクはマズい時代だが、性格やプレイスタイルを参考にするくらいは許されるだろう?」
「なる程な。お前、かなりの漫画知識を、身につけていたんだな」
「佐藤こそ、けっこう本気なのが伝わって来たよ。オレはこの漫画、行けると思ってる」
「まるで優秀な編集者だな。だが、信じてみるのも、悪く無いか。どんどんアドバイスくれ」
「じゃあ、遠慮なく行くぞ。ウチの雑誌の場合、描いているのが女子高生しか居ないのもあって、若い女性の読者層が圧倒的に多い。偏っていると言っていいくらいだ」
「そ、そうなのか? じょ、女子に見られるのかあ?」
「そこを、意識する必要があるな。まず、来てる服も、髪型もダサい。ファッション誌を参考にして、ガンガンカッコよくして行こう」
「そ、そうか。こう見えて、ファッションにも、ヘアスタイルにも興味あって、雑誌とか買ってるからな」
「お前の絵柄は、芽美のサッカー漫画よりリアル寄りだ。相性は良いハズだ」
ボクは佐藤の漫画に、明らかな手ごたえを感じていた。