企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)136話

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究極の雑用係

次の日、夜吸さんがハネムーンとやらから帰って来た。

 

「なんだあ、チンケな契約料だなあ? スポンサー契約ならよ。もっとドカッと取れよ」

どうやら佐藤のサッカー漫画の、契約金額が不服の様だった。

 

「ボクの場合、お金か漫画かで言えば、完全に漫画なんです。漫画で連載を続ける環境を長くさせられれば、それでいいんですケドね」

場所は昨日と同じファミレスで、他のメンバーはいない。

 

「随分と、殊勝な心掛けだなあオイ?」

「営利に走ると、自滅しそうなんですよね。漫画で喰って行くって。けっきょく、漫画家も金も、今の人気も、全部失ってしまう気がして……」

 

「なる程……確かに、そうかもな。オレも、営利ばかりを追い求めて、中身がスッカラカンの連中が事業に失敗するのを、何度も見て来たからな」

夜吸さんはステーキの500グラムを平らげ、メロンソーダを飲んでいた。

 

「ま、経営者はお前だ。お前が好きにすればいいさ。だけどよ、そろそろ一人じゃ大変なんじゃないのか?」

 

「そ、そうですが、流石に人を雇う余裕は……」

偉そうに言ってはみたが、台所事情が厳しいのも事実だった。

 

「そうだなあ。会社を大きくしたいんなら、株式会社化して資金を募って……みたいな感じだろうがよ。そうでも無いんだろ?」

 

「ですね。ボクは、社長がやりたくて、こんなコトしてるワケじゃないんです。むしろ、社長なんて究極の雑用係なんじゃないかと……」

 

「ギャハハ……ちげーねーわ。今どきの中小企業の社長なんて、確かに究極の雑用係だわ」

 すると、ファミレスのドアに付けられたベルが鳴り、大勢の女子高生と佐藤先生が入って来た。

 

「アレ……夜吸氏、もう新婚旅行から帰ってたっスか?」

芽美が真っ先、声をかけボクの隣に座った。

 

「おう、チビッ子。お前もそろそろ新連載、描けたのか?」

「チビッ子じゃないっス! もう、来月には載るっスよ」

 

「ところで何を話してたんですか?」

市川さんが聞いてきた。

 

「そうだなあ。ウチの雑誌を、大きくするかどうかって話だよ」

「え、大きくしちゃうんですか、お兄さん?」

「いや、ボクとしては、今のままがいいかなって……」

 

「よかったぁ。わたしも、今のままが良いです」

市川さんも、ホッとした表情をみせた。

 

「一人では、早く行ける。大勢だと、遠くに行ける……」

佐藤が、ボソリと言った。

 

「ど、どうしたんだ、佐藤。お前、熱でもあるのか?」

「ねえよ。オランダのことわざだ!」

どうやら、サッカー方面の知識らしい。

 

「心理かもな。一人で仕事をやれば、決定するのも自分だけだ。意思決定が早いから先手を取れる」

夜吸さんが言った。

 

「でも大勢でやれば、もっと凄いコトをできるかもです。一人じゃできないコトも、出来るんじゃないですか、佐藤先生!」

池田さんが、尊敬の眼差しで佐藤を見つめていた。