ムキーーーッ!!?
「ウチのデザイン事務所も、最初はデザインやってて凄いなあって思ってました。でも実際に受けるのは、無難なデザインのアレンジが殆どだったりして……」
晃さんは言った。
「晃さんは、元々デザインに関心があったんですか?」
ボクは、なにげに聞いてみた。
「はい、美大を出てますから。あ、でもパソコンはちょっと苦手なんです」
晃さんは、才能で絵を描くタイプと感じた。
「ボクは、パソコンの方が得意かな。やってるコトと言えば、漫画の文字入れや背景のハメ込み……ネット漫画雑誌の表紙を、毎回作るコトくらいですケドね」
「へー、それじゃあ、お邪魔しますね」
見学する気、満々の晃さんはアパートの部屋の扉を開けた。
「おわッ!? やっぱ見学していくんですか!?」
ボクは、慌てて後を追う。
「アレ……誰か寝てますよ? 妹さんですか?」
「いえ、ボクに妹はいません……って、やっぱ芽美か!」
キレイとは言い難い畳に寝っ転がっていたのは、原田 芽美だった。
「そう言えば、合いカギ渡してたんだっけ。ホラ、こんなところで寝てると風邪ひくぞ」
「あや? 鷹詞がいる……ここはどこっスか?」
「なんか、小っちゃくて可愛らしいコですね?」
するとボクの肩越しから、晃さんも芽美を覗き込んだ。
「……んなッ!?」
慌てて飛び起きる芽美。
「鷹詞、その女は誰っすかぁッ!!?」
ボクと晃さんの間に、割って入る芽美。
「ああ。話すと長くなるんだケド、デザイン事務所の晃さんだよ」
「どうしてデザイン事務所の女が、ウチに居るんスか!?」
「ここはお前の家じゃなくて、オレのアパートな。実は、成瀬さんって社長と話す機会があって、業務提携を結んだんだ。それで、晃さんがウチに見学を……」
「見学ゥ!? この汚らしいアパートなんか見学して、ど~するっスか!?」
「それに関しては、オレも同意なんだが……まあとりあえず、見てもらうコトになったんだよ」
「フ~ン、随分と大人な感じの女っスね」
「お前が、チビッ子なだけだろ?」
「チビッ子言うなっス!? 大体、鷹詞は女と馴れ馴れしく……」
「あの~このコは?」後ろから問いかける、晃さん。
「あ、ボクの彼女なんです」
「え、そうなんですか? 見たとこ、小学生か中学生くらいに見えるんですケド」
「ムキーーーッ!!? こ、この女ッス……!?」
「あ、こう見えて原田先パイ、わたしの先パイだったりします」
池田さんも、咄嗟にフォローする。
「そうなの? あなたも子供っぽいと思ってたけど、そんなモノじゃないわね?」
さりげなく、二人の逆鱗に触れる晃さん。
「ムキーーーッ!!? わたしのどこが子供っぽいって言うんですか!」
「ムキーーーッ!!? その池田なんて目じゃないって言ったっスね!?」
彼女は意識すること無く、人を怒らせる性格の様だった。