解かり合う
「やっぱこの女、変わってるっスね!?」
芽美の言う通りでと思った。
「でも差別って実際、どこにでもあるモノだからなあ」
「そりゃそうっスね。笑いだって実際には差別っス」
「他人を笑うにしろ、自分が笑われるにしろ、そこには確実に差別が入ってくるからね」
「人間が複数存在している以上、差別は無くならないんスよ」
「一部の団体は、差別なんて無いコトにしたいみたいですが?」
晃さんが言った。
「でも今まで生きてきて、人を差別をしない人間になんて、会ったコト無いですよ」
ボクが正直に、感じた事だった。
「バッサリっすね?」
「兼ちーじゃないけど、人間の世界や歴史って、差別によって成り立ってと思うんだ。性別や国籍だけが差別ってワケじゃないからね」
「年齢による差別、学歴による差別、仕事ができるかできないかによる差別……まあ、色々ありますよね」
「そんなの、全部なくなるワケ無いっスよ」
「学年が一つ違うだけで、後輩のクセに生意気だとかさ、誰だって言いそうじゃん」
「最近じゃパワハラが問題になってますケド、部活の上下関係って完全にパワハラと言えばパワハラなんですよね」
「差別って別に、悪いモノばかりじゃ無い気はするんスよ。例えばオリンピックだって、脚が速いかで金・銀・胴を決めてるっスよね。能力値で人を差別してるワケっスよ」
「それがダメとかで、ゆとり世代なんかは運動会で、みんなで同時にゴールとかやっていたケドな」
「会社や学校なんかじゃ、差別は存在しないのが前提だろ? お陰で、イジメまで存在しないコトにされて、苦しむ人間が大勢いるんだ」
「建前ってモノほど、厄介なモノって無いっスよね?」
「漫画ってさ、差別って絶対に必要だと思うんだ」
それは、漫画という媒体の存在価値にも思えた。
「差別はあるって前提で、それでどう解かり合えるかが重要だろ?」
「そうっスね」
「解かり合えるか……ですか。確かにそれが無くして、『差別なんて無い』っていくら謳っても、無意味に思えますね」
「兼ちーも言ってたよね。人を差別する人間がいて、それを差別する人間もまた差別主義者だって。今でもみんな、差別はしているんだ。表面上は差別を口にしないってだけでさ」
「それが、本当に正しいのかって、思ってるんですね」
「ああ。本当はもっと解かり合えるのが良いし、建前じゃない部分でなら、人間はそうしてると思うんだ」
「少年漫画の黄金パターンっすね。互いにいがみ合っていた主人公とライバルたちが、戦いを通じて解かり合うようになって行く……っス」
芽美が言った、『解かり合える』というテーマは、多くの名作のテーマでもあると思った。