合宿
一週間が経過した。
辺りの雰囲気も、かなり秋っぽくなる。
「つまりオレは、スポーツ関連の量販店とスポンサー契約をした上で、成瀬さんとこのデザイン事務所のホームページにも漫画を載せるんだよな」
いつものファミレスで、佐藤がマカロニグラタンを食べながら言った。
「まあ、作ってるのは成瀬さんトコだケド、大倉野さんのサッカークラブのホームページだケドな」
ボクも、目の前のデミグラスオムライスを頬張りながら、返答をする。
「だ、大丈夫か? かなり、大事になってるよな」
「だよなあ。昨日、試作のホームページを見せてもらったケド、キャラ紹介やらこれまでのストーリーやら、かなり綿密にデザインされててさ」
「なんか、とんでもないプレッシャーなんだケド?」
「スポーツ関連の量販店のロゴを、主人公チームの胸に入れるって話があるんだ。契約としては、当然ユニホームだから歪んだりして構わないそうだが……どうする?」
「それ……幾らになんの?」
「一ヵ月、五万。つまり、一本で五万だな」
「グフゥッ!! プレッシャー!!」
「それとは別に、スポンサー料金も支払われる。今は、社長からして乗り気なんだ。市川さんのスノボ漫画で、連載漫画の味をしめた感じかな?」
「た、確かに企業としては、一回きりの説明漫画より、連載漫画の方が投資を長く回収できるってか?」
「解って来たじゃん、佐藤先生!」
「胸にロゴを入れるだけで、五万……でも、いきなり胸にロゴが入っていたら、おかしいだろ?」
「でも幸い、お前のサッカー漫画ってプロサッカー選手が立ち上げた、ローカルリーグのチームなワケだしな。スポンサーを見つける展開も、ありなんじゃないか?」
「う~む、言われてみれば、何とでもなりそうだな?」
「あと、店舗とか出すなら、写真から起こしてOKって話だ。それに見学したいのであれば、いつでも構わないってさ」
「やっぱ、店舗とか出した方がいいよな。どんな話にするか?」
佐藤が、喰いかけのマカロニグラタンの前で、腕を組んでいると、学校帰りの市川さんと田中さんがやって来た。
「あ、佐藤先生。どうもです」
市川さんが、丁寧に頭を下げる。
「市川さんたちも、好きなの頼んじゃって。漫画家たちとの親睦ってコトで、経費で落とすから」
「あ、はい。では、遠慮なく」
市川さんはシーフードパエリア、田中さんはカルボナーラを頼んだ。
「そう言えば、そろそろスノーボードの季節ですよね?」
田中さんが、さりげなく言った。
「あ、あの、スノボ合宿とか……ど、どうでしょうか!?」
何故か市川さんは、顔を赤らめている。
「合宿かあ。いいね、それ」
ボクのネット漫画雑誌のメンバーも、アニメみたく合宿に行くコトになりそうだった。