プロフェッショナル
大倉野さんの言葉は、漫画家である佐藤や、ネット漫画雑誌を出してるボクにとっても衝撃的であった。
「ボクの考えなんだケドね。ヨーロッパではスポーツクラブは、街の地域コミュニティの中心だったりするんだ。クラブに行けば、自分の好きなスポーツを楽しめるし、自分の街のチームを応援するコトだってできる」
「で、でも、漫画って、スポーツじゃないですよ?」
佐藤が言った。
「だけど、佐藤。日本文化の象徴的なのが、漫画やゲーム、アニメでもあるぞ? スポーツクラブと言えど、スポーツ以外を取り入れちゃダメな理由なんてない」
ボクは、大倉野さんの意見を支持した。
「日本の場合、縦割り行政の弊害なのか、大した理由も無いのに、やれない事も多くてね。でもいずれ、日本にも真のスポーツクラブができると思ってるんだ」
「そうですね、大倉野さん。そうなったらいいですよね」
「いや……『そうなったらいい』じゃダメなんだ。そうなるように、努力して行かなくっちゃね」
「は、はい」
ボクは、大倉野さんに優しく叱られた。
「例えば他のクラブに、チアリーディングがあるように、ウチのクラブも漫画部門を持って、漫画でサポーターたちとコミュニケーションを取ったり、交流を深めて行きたいと思ってるんだ」
「それって、漫画部門がクラブチームが題材の漫画の連載をしたり、SNSで発信していくって感じですよね?」
池田さんが質問する。
「そうだね。キミたちの漫画のようなネット漫画であれば、出版費用は極限まで抑えられる。漫画家に、それなりの費用を支払うコトも、可能だと思うんだ」
「で、でも、オレがクラブチームの漫画を連載……でも、今のサッカー漫画は?」
佐藤が慌てて、質問する。
「そこなんだよね。佐藤先生の漫画をウチのネット漫画に持ってくるのも、有りだと思っている。とうぜん、二つのネット漫画雑誌に同時連載にはなってしまうが……」
「つまり、ウチのお客さんが奪われるってコトですよね……」
ボクは、正直に大倉野さんを問いただす。
「場合によっては、佐藤を抜かれる可能性もある」
「ああ。ボクたちは、プロのクラブチームだ。サッカー選手はプロであり、一人一人が個人事業主でもある。漫画家についても、同じように考えているよ」
大倉野さんも言い訳などせず、正面から攻めて来た。
「つまり、まずは佐藤の漫画で人を集め、いずれは自分たちクラブチームのサポーターの中から、漫画家を発掘しようとしているのですね?」
「日本は、漫画大国だからね。サッカー好きで、漫画好きなコの比率は、他の国とは比べ物にならないくらい、高いと思っているよ」
大倉野さんが答える。
「それ、面白そうですね」
ボクは、答えた。