総合スポーツクラブ
「なんかオレ……ボ、ボクも、噂には聞いていたんですが、やっぱそんなに影響があったんですか?」
佐藤が身を乗り出して質問した。
「そりゃああったよ。当時はアニメも終わっちゃってたケド、アニメを見た子供たちががサッカーを始めてね。そこから黄金世代と呼ばれる選手が生まれ、日本サッカーが世界に飛躍するきっかけにもなったんだ」
大倉野さんは言った。
「も、もしオレが描いたサッカー漫画を読んで、一人でもサッカーを始めてくれる子供がいたら、感動して泣くぞ、オレ!」
「も、もう一人や二人、いるんじゃないでしょうか?」
池田さんが言った。
「いや~、それは無いだろう?」
「でも、大野先パイとSNSのチェックをしてたとき、けっこーありましたよ。そう言う描き込み」
「うん、オレもあると思うぞ。お前の漫画、長期で人気だし」
「マ、マジで!?」
佐藤は、自分の漫画のポテンシャルに気付いてなかった。
「ボクもね。漫画のポテンシャルは、解っているつもりなんだ」
「い、いやでも、国際的に知名度のあるスペシャル漫画と比べられても?」
「まあ、流石にそこまでは……」「で、ですよね……アハハッ!」
大倉野さんの言葉に、一安心の佐藤。
「でも、そうだなあ。漫画って、まだまだポテンシャルを活かし切れてないと、ボクは思うんだ」
「と、言いますと?」ボクは自分の意見を押さえ、聞き手に回る。
「例えばウチは、サッカーのクラブチームだケド、ヨーロッパのクラブは、サッカー以外に色んなスポーツを取り入れた、複合スポーツクラブなんだ」
「え、そうなんですか!?」
池田さんが、驚きの声を上げると、佐藤が説明し出した。
「そうだよ、池田さん。有名どころじゃ、スペインのクラブはサッカー以外にバスケっとかやってるしね。ドイツじゃ、卓球があったりとか、国や地域によって色々あるんだよ」
「そう。日本でも、ウチはサッカーだけなんだケド、バスケやスキーとかやってるクラブもあってね」
大倉野さんの台詞を、佐藤が横取りする。
「ヨーロッパじゃ、スポーツクラブに行けば、色んなスポーツが楽しめるし、観戦もできる。日本じゃまだまだ個別運営で、活かしきれてない部分もあってね」
「そうなんですかあ! さすがは佐藤先生ですゥ!!」
「に、日本の縦割り行政の弊害なのかなあ。ボクとしては、同じ敷地に色んなスポーツのできる施設を集めた、総合スポーツクラブが理想なんだ」
「つ、つまり、大倉野さんは……」
「ああ、クラブの一部門として、サッカー部門と共に、マンガ部門があっても面白いんじゃないかって、思ってね」
大倉野さんは言った。