ネット漫画家たちの収入
「ところでお前ら、金はあんの?」
夜吸さんが、スノーボードやウェアを見て回る、女子高生たちに言った。
「わたしはその……お店からいっぱいお金貰ってるんで、頑張って高いの買います」
スノボ侍の漫画を描いてる、市川さんが言った。
「まあ、市川ちゃんは別として、他のヤツはど~なの?」
「わたしは、ブログのアフィリエイト収入がありますから」
山口さんの異世界ファンタジー株式・不動産投資の漫画は、未だに根強いファンがついていた。
「わたしも、企業案件の漫画を受けたときのお金が、まだあったりするんで」
萩原さんが言ったのは、夜吸さんから受けた企業案件の漫画のコトだった。
「いいなあ。わたし、まだ連載始めたばっかだから、お金ないよ」
大野さんが、嘆いた。
「実はさ……大野さんの猫カフェ漫画が、ペットショップから何件かスポンサー依頼が来ててさ」
「ええッ!? そうなんですか!?」
「うん、あの漫画、わたしも人気出ると思ってたのよ。猫好きな妹に、必死に付い会おうとする猫アレルギーのおねえちゃんが健気で」
山口さんも、親友の漫画を褒める。
「大野さんのブログのアフィリエイト、今月かなりバズっててさ。この分だと、余裕でウェアくらい買えちゃうんじゃないかな?」
「う、あわわ。そ、そうなんだ。最近、SNSでも凄い人気だなあって思ってたけど」
「アンタねえ。ブログの方も、ちゃんと見ておかなきゃダメじゃない」
「はあい」山口さんに怒られる、大野さん。
「田中さん、池田さん、池田さんは、だいじょうぶ?」
「わたしたちも、アシスタント料として、月に一万は貰ってるんで」
「お小遣いと合わせれば、なんとかなるかと……」
「それにわたしは佐藤先生に、よくおごってもらってますから」
池田さんが、少し照れながら言った。
「わたしも、萩原先パイが気前いいから、たまにごちそうになってる」
「まあヴァンパイア探偵だと、そんなにスポンサー付かないからさ」
今井さんが先パイを持ち上げると、萩原さんは申し訳なさそうに言った。
「探偵事務所とか、弁護士とか……あるにはあるんだが、どうなんだろうと」
ボクは、自分が原作でもあるので少し戸惑う。
「まあ、どっちも怪しくはあるな。探偵事務所なんて儲かって無さそうだし、弁護士なんて、やたらと自己主張の激しいヤツが多そうだし」
夜吸いさんが持つ、偏見の入り混じったイメージはボクと大差なかった。
「なんとか、収益化の方法を考えないとな」
「あ……あたしはお金無いっス。一番安そうなのにするっス」
芽美は、最初の連載が終了して、金銭的には厳しそうだった。
「芽美のは、オレが出すよ。彼女へのプレゼントだ」
「た……鷹詞ィ!?」
ボクに抱きつく芽美。
周りから、賞賛と冷やかしの声が上がった。