入院
次の日、ボクは熱を出して倒れ、病院に担ぎ込まれる。
救急車は、芽美が呼んでくれた。
「まったく、ただの風邪と過労なのに、倒れ方が大袈裟なんスよ!」
「面目ない……」
芽美が不器用に剥いてくれたリンゴをかじっていると、夏休み中の女子高生たちが大勢押し掛けて来た。
「お兄さん、大丈夫だった?」「心配しましたよ!」
萩原さんと、市川さんが心配してくれる。
「ま、いい休息だと思って、しっかり休むコトね」
「でも原田、みつかってよかったね」
山口さんと大野さんが言った。
「そうだな、心配かけてゴメン。芽美、お前もみんなに謝らないとな」
「ゴ、ゴメンっす」芽美は、顔を赤らめながら謝罪する。
「なんか原田先パイ、社長と付き合ってるみたい」
「それ、自分も思ってました」「ひょ、ひょっとして……!?」
田中さん、今井さん、池田さんの三人の後輩たちが、好奇心に満ちた瞳を向ける。
「ああ……オレたち、付き合うコトにしたんだ」
「じ……じじ、実はそうなんス……」
それは、雨の夜に決めたコトだった。
「ええええッ!?」「そ、そっかあ……」
「まあ……自然な流れな気もするわ」
市川さんも、萩原さんも、山口さんも、わずかに表情を曇らせる。
「それと、芽美の描いていたサッカー漫画は、来月で終わらせるコトに決めた」
「え、いいの……原田?」市川さんが、心配そうな顔で原田を見た。
「良くはないっスけどね。このまま続けても、かえってあのコたちが不幸になる気がするんスよ。また、描きたくなったら描くっス」
芽美は、自らの生み出した登場人物との、決別をする。
「そっか……でも、また次の漫画を描くんでしょ?」
「そりゃ決まってるっスよ。次は、市川にも、萩原にも、佐藤先生にも、負けない漫画を描くっスよ!」
「芽美……次の漫画は、オレにも手伝わせてくれ」
「よろしく頼むっスよ、鷹詞」
芽美は、ボクの名前を始めて読んだ。
「でも、もう退院なんでしょ、お兄さん」
「風邪は治ったし、疲れも取れたから、居させてはもらえないだろうね」
「じゃあ、海。明日、みんなで海行こうよ!」
「もう、いきなり何言ってるのよ、このコは……」
山口さんにたしなめられる、大野さん。
「アタシは、いい考えだと思うっスよ?」
「散々心配させといて、上から目線なんだよ。この彼氏持ちがぁ!」
芽美は、萩原さんに羽交い絞めにされている。
「海か……それ、いいかもな」
翌日、大勢の女子高生たちを引き連れて、ボクは近郊の海の浜辺にいた。