著作権
「やはり作画は、お前が一番早いな」
ボクは、芽美が描いたアニメのキャラを眺める。
「萩原や山口も、今でこそキャラも描いてるっスけどね。一年のときは、先輩のアシでキャラ描いてたの、アタシくらいっスから」
「確か芽美って、市川さんと同じ中学で漫研だったんだよな?」
「そん時も、正式な部活ってワケじゃ無かったっスよ」
「完コピはマズイと思うが、ここからアレンジしてみたらどうだ?」
「でも、どっからがアレンジで、どっからがパクリなんスかねえ?」
「著作権法では、よほどデザイン性が高く無いと、他人の作品に関与はできないみたいだぞ……詳しくはないが」
「どゆことっス?」疑問符を顔に浮かべる芽美。
「わ、わかりません、お兄さん!」大野さんも言った。
「えっと、だから……芽美の描いた漫画のキャラと、大野さんの描いた漫画のキャラが似ていたとする。でも、著作権法では両方が認められるんだ」
「そうなんスか?」「へー知らなかった」「た、たぶんだケドな」
自信の無いボクに、恐らく解かってない二人。
そこに見覚えのある顔がやって来た。
「久しぶりね、でもそれじゃ説明にはなってないわよ?」
「あ、乃梨ちゃんっス」ファミレスに現れたのは、末依先生だった。
「著作権ってのはね。自分の作品の保護を目的としていて、他人の作品の権利を侵害するモノでは無いのよ」
末依先生は、芽美や大野さんの隣に座った。
「例えば、原田さんのキャラが、大野さんの描いたキャラと似ていた場合、原田さんが自分のキャラと似ているから描くなと主張する……でも、まず認められないわ」
「な、なんでっスか?」
「だって原田さんが、キャラの権利を独占するワケでしょ」
「そりゃ、自分のキャラっすから……」芽美も、なんだか自信が無さそうだ。
「でも、アニメや漫画のキャラなんて、みんな似てるよ? 誰かが独り占めしちゃっていいのかな?」
大野さんが言った。
「確かに、世の中の人すべてに、使うなっていう権利はないような?」
「そうなのよ。第三者に対して使うなと主張する場合、よほどデザイン性が高いとか、オリジナリティが高くないと、著作権では認められないのよ」
「それにホラ……ストーリーを見ても、誰かが学園モノの話を独占したり、スポーツモノを描くなっていう権利はないんだ」
ボクも、偉そうに補足する。
すると夜吸さんもやって来て、ボクの隣に座った。
「有名な怪獣ですら、著作権で認められてるのは、背びれの形と鳴き声くらいのモンだ。著作権で他人の作品を縛るのは、かなり厳しいと思ったほうがいいぜ」
「でも世の中、著作権だけじゃないから気を付けてね。商標登録とかされちゃってると、同じ名前の商品は出せないから」
末依先生が、付け加える。
「と、ところでお二人は、どうしてここに?」
ボクは、夜吸さんと末依先生に問いかける。
「たまたま通りかかったんだが……まあいいか?」「そ、そうね」
二人は、視線を合わせた。
「オレらさ……結婚することになったんだ」