企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)087話

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続けられなかった漫画

「芽美……お前、こんなところで、何やってんだ……」

 

夜の雨はまだ降っていたが、ボクの心は安堵感に満ちていた。

 

「お兄さんを、待ってたんスよ……」

芽美は、言った。

 

「そっか……ゴメンな。話をちゃんと聞いてやれなくて」

ボクはビショ濡れの服で、芽美を抱いていたのに気づく。

 

「悪い、濡れちゃったかな? 寒かったろ、アパートに入ろうか」

ボクはドアを開ける。

 

「アタシの漫画……もう、散々な言われようなんスよ……」

 

漫画に対して、ひときわ高いプライドを持っている芽美。

 

「そうだな……気付かなかったよ。でも、芽美の漫画は、そこまで酷い出来じゃない……」

「それ、傷付くっスね。やっぱ、佐藤先生の漫画には、相当劣るってコトっすよね」

 

「そんな、つもりじゃ……」「じゃあ、どんなつもりで言ったっスか!?」

芽美は、ボロボロと涙を零し、鼻水も出ていた。

 

「アタシは、サッカーにあんまし詳しくないし、雑誌の感じも解らなかったから、軽い感じで始めたんスよ……」「うん……」

 

 

「それなのに……お兄さん……佐藤先生にだけ、いっぱいアドバイスして、ズルいっスよ!!」

「だってアイツは、それまで何をやってもすぐに投げ出すヤツで、お前みたいにしっかりもしてなかったから……」

 

「でも、ネットのヤツらが言うように、佐藤先生の漫画はストーリーもしっかりしてて、キャラも立ってて、なによりサッカーをちゃんと描いてるっス。それってみんな、お兄さんがアドバイスしたコトッスよね!!」

 

芽美の言う通りではあったが、つい正論が口を突く。

「……雑誌に載せる漫画を良くするのなんて、当たり前のコトじゃないか?」

 

「だったらアタシにも、アドバイスして欲しいっスよ!? 市川のスノボサムライは言うに及ばず、萩原のヴァンパイア探偵にも完敗っス。アレも、お兄さんの原作じゃ無いっスか!!」

 

「ヴァンパイア探偵は、ずっと温めていた作品だ。萩原さんのリアル寄りな絵のスタイルに、合ってると思ったんだ……」

「アタシの絵じゃ……作風じゃダメってコトっスよね!?」

 

芽美は、雨の中を駆けだした。

「待て……芽美!?」

 

直ぐにボクも、雨の中へと舞い戻る。

車のライトが行き交う道路を、走り去る芽美。

 

「もう、二度と見失わない!」

ボクは、必死に彼女を追った。

 

夜の公園の辺りで、芽美を捕まえる。

傘もささずに、ズブ濡れの二人。

 

「アタシ……アタシの描いたあのコたちを、幸せにしてあげられない……」

それは、彼女の描くサッカー漫画の、キャラクターたちのコトだった。

 

「もう……終わらせよう……」

ボクは芽美を、うしろからギュッと抱きしめる。

 

「アタシ、もっと……あのコたちと一緒に居たかった……もっとあのコたちの未来を、描きたかったっスよおおぉぉーーー!!!」

 

小さな漫画家の叫びは、夜の雨にかき消された。