夏の海
太陽がギラギラと輝き、波の音が囁き潮風が香る。
可愛らしい水着や、魅惑的なビキニを着た少女たちが、波間に戯れた。
「お前んトコの地味な女子高生たちも、水着を着せるとまあ絵になるな」
ビーチパラソルの下で、チェアに寝転がった夜吸さんが言った。
「いやあ、みんな可愛かったり、美人だと思いますケド?」
ボクは、思った事を言った。
「まあ、百歩譲ってそうかも知れんが、なぜチンチクリンのアイツなんだ?」
「それは、その……芽美も可愛いですよ?」
「ねーわ。あん中じゃ、萩原ちゃんか、市川ちゃん、山口ちゃんだろ?」
「何を言ってるのかしら、アナタみたいな男が居るから、心配でわたしまで付いてくるハメになったんじゃない!?」
夜吸さんの隣で仁王立ちしているのは、芽美たちの担任である末依 乃梨だった。
「ス、スゲー!」「い、一体なにカップあるんだ!?」
けれども浜辺で最も注目を集めているのは、彼女に他ならない。
黒いビキニに納まりきらないバストとヒップは、周りの男どもの羨望の眼差しと、女たちの嫉妬の眼差しを同時に集める。
「そいやあ言ってなかったが、オレたち、寄りを戻したんだ」
夜吸さんが、末依先生を見ながら言った。
「そ、そうですか。昔、付き合ってたとは聞いてましたが……!?」
最近、他に用事があるとか言ってたのは、先生と寄りを戻すためだったのかと、考える。
「昔はアナタみたいな生き方って、認められなかったケド、今はそういう生き方ってのもありかなって……」
末依先生は、少し頬を赤らめながら言った。
「いや……たぶん、オレ自身も変わったんだわ。昔のままじゃ、お前はオレとは付き合わなかったと思うぜ」
夜吸さんは、ボクを見た。
「ま、お前のお陰ってのも、あるかもな」「え、オレの?」
「けっきょくフリーランスってのは、人と同じコトをしてちゃダメなんだ。価格競争になって、潰し合って、金銭的にも精神的にも疲弊して終わる」
「確かにそうね。漫画を大手企業に資金を出させて連載させるなんて、ほぼ思いつかないアイデアでしょうね。あのコたちが、あんなに生き生きしてるのも、もしかしたら……」
「それは……逆ですよ」
ボクは言った。
「引き籠ってニートやってたオレが、こんなに生き生きしてられるのって、彼女たちみんなのお陰なんです」
すると、みんなが呼んだ。
「お兄さん、こっち来てビーチバレーやろーよ」
「スイカ割りもするっス!」「ああ……待ってろ!」
ボクは、みんなの元へと駆け出した。