企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)066話

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契約

「このサッカー漫画、アタシ知ってる。友達に勧められて読んでみたのよ」

「スノボサムライも、面白いですよ。我が社のボードを使ってもらうのも、ありじゃないですか?」

会議に参加していた、各部署の責任者からも、意見が上がった。

 

「わたしも、サッカー漫画と、スノボの漫画は興味を惹かれたね」

社長がボクに向かって、渋く低い声で語りかける。

 

「サッカーに関しては、ウチはメーカーの商品を取り扱っているくらいだが、もう少し人気が出れば、オリジナルユニホームを作って、コラボしてもいい」

「な、なる程! いいアイデアだと思います」

 

ボクは、流石は社長だと思った。

 

「もしよければ、プロサッカーチームを紹介しよう。ウチの、取引先でね。まあ、漫画についてどんな考えなのかまでは、知らないが」

 

「よろしくお願いします、社長」

そこは夜吸さんが、調子良く答える。

 

「問題は、スノボ漫画の方です」宇津井さんが言った。

「話も、意表をついていて面白いし、アナーキーなのも、スノーボードのイメージとマッチしていると、思うのですが?」

 

「何が、言いたいのだね、宇津井。キミはまさか、彼らと契約を……」

「そうです。プロのスポーツ選手と契約を交わすのと同じように、漫画のプロと契約するのです」

専務の反論を、宇津井さんが押し切る。

 

「フフフ、面白そうじゃないか? キミたちのところの漫画家が良ければだが、わが社はスノーボードサムライ漫画の、スポンサーとなろう」

 

社長の決断は早かった。

 

「それで、契約体制のお話ですが……」「月に三十でどうでしょう?」

夜吸さんの出鼻を、宇津井さんがくじいた。

 

宇津井さんは口数も少なく、積極的でも無かったが、最初から彼の筋書き通りに、話しが進んでいた気もした。

 

その後、夜吸さんと、宇津井さんが中心となって、契約書が交わされた。

無論、スノボサムライ漫画を描いている、市川さんにも連絡をした。

 

「どうやら彼女も、漫画を続ける決断をしてくれたみたいです」

「そっか。こっちも書類の整理、付いたぜ」

 

ボクたちは、会社を後にした。

思えば、かなり良心的な人ばかりで、ボクから見ればご年配の社長や、専務ですらスノボに詳しかった。

 

「ボクはこれから、市川さんと打ち合わせですね。彼女にも、会社に足を運んでもらうコトになるでしょうから」

 

「そうだな。で、金の分配はどうする?」

「え? 夜吸さんが、十……じゃ、ダメですか?」

 

「オイオイオイオイ、それでいいのかよ? 今回、会議でいきなり契約を勝ち取れたのは、お前の力だと思うぜ?」

 

「でも、セッティングして、ここまで連れてきてくれたのも、夜吸さんじゃないですか。書類関連だって、ボクはまだ解らないことが多いですし」

 

「まあ、そうだケドさあ」夜吸さんは、まだ納得していなかった。

「漫画について、ボクは世の中から、正当に評価されたらなあって思ってます。それと同じで、営業の仕事も、正当に評価されるべきでしょう?」

 

「お前、真面目だねえ」夜吸さんの口元は、緩んでいた。