企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)069話

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スノボサムライのライバル


翌日、ボクは授業の終わった学校帰りの市川さんと合流し、大手スポーツ用品ショップの運営会社の本社へと向かった。

 

「まあウチとしては、ウチのボードを出来るだけカッコ良く使ってくれればなあ……ってくらいですね」

打ち合わせの用の小さな部屋のデスクで、宇津井さんが言った。

 

「そ、そんなモノですか?」

ボクは、もっと辛らつな意見や注文が来ると思っていたので、いささか拍子抜けした。

 

「た、例えば、なんですケド……」隣に座った、黒髪の市川さんが言った。

「ライバルを登場させて、そのライバルにも、ボードを使わせようかと、考えてきたんですケド?」

 

「なる程ォ、それいいアイデアかもね。やっぱ主人公一人じゃ、使えるボードの数も限られてくるからねえ」

宇津井さんは、考えていなかったのか、関心していた。

 

「スポーツ選手との契約はプロでも、漫画家との契約はまだまだですね」

ひょこっと顔を出したのは、夜吸さんだった。

 

「おう、夜吸。来てたのか?」「今、来たとこっス」

夜吸さんは、馴れ馴れしく宇津井さんの横に座った。

 

「で、どんなキャラを考えてるの?」「あ、はい。こんな感じのキャラです」

「お、今風の美形じゃないか? 漫画って、便利だねえ」

宇津井さんは、言った。

 

「あの……何が便利なのでしょうか?」

「ああ、ウチの場合、普段はプロのスポーツ選手と契約をしてるんだケドさ。スポーツができても、その選手がカッコイイとは限らないワケでね」

 

「ま、漫画なら、全キャラ美形もぜんぜん有りだしな」

「ウソっぽくなり過ぎても、どうかと思いますケドね」

ボクは、釘を刺して置いた。

 

「この美形キャラは、どんな設定なの? 市川ちゃん」

「あ、はい。大学生で実業家のエリートですね。スポーツ科学を専攻していて、科学的見地からスノーボードに取り組んでいるんです」

 

「なる程ね。主人公が、戦国時代からタイムスリップしてきたサムライだから、それと対比させようってのか?」

夜吸さんは、関心して腕を組んだ。

 

「それなら、クールなデザインのボードがいいな。そうだ、今、企画段階のボードがあるんだケド、それを採用してくれないかなあ?」

「それ、まだ企業秘密なんじゃ?」

 

「普通は、シーズンが来るまではね。でも、現実では真夏でも、漫画の中は真冬のシーズン真っただ中じゃないか?」

宇津井さんは、少しずつ漫画でのマーケティングを理解して来た。

 

「もちろん、社長や専務に相談する必要はあるケドさ。シーズン前の夏から、漫画の中でボードが使われていれば、ライバルでは無くウチの商品だと認知させられる」

宇津井さんは、市川さんの許可を得て、キャラ原案のコピーを取った。

 

「冬までに、主人公のサムライと、ライバルの美形大学生が、熱い戦いを繰り広げれば、売り上げのアップにつながるかも知れない!」

「何言ってんの、宇津井さん。その為に、漫画家と契約したんでしょ?」

 

「そ、そうだな。今日はどうもアリガト。さっそく、頑固な上司に掛け合ってくるよ」

「宇津井さんは、コピーしたキャラ原案を持って、部屋を出て行った。

 

「市川さん、企業との打ち合わせはどうだった?」

「き、緊張しました。でも、楽しかったです!」

「そっか、良かったな、市川ちゃん。お祝いに、お兄さんが何か奢っちゃうぜ?」