漫画の可能性
佐藤のサッカー漫画は、女性にはキャラ人気で、男性にはサッカーがちゃんと描いている事で人気になっていた。
「お前さあ、これだけ人気の漫画を抱えてるんならよ。少しは収益化を考えねえとマズいだろ?」
「ユニホームロゴのスポンサー募集は、ボクも考えてました。漫画の収益化にしても、現時点で説明漫画くらいしか念頭に無い企業が多いですからね」
「でも、お前の最終的な目標は、『説明漫画』じゃなくて、『普通のストーリー漫画』を企業に金を出させて連載させたいんだろ?」
「はい、そうです」ボクは、簡単に言った。
当然、簡単で無い事は解かっていたが、それでも夜吸さんには、ボクの目標を知っておいて欲しかった。
「今の時点で無い価値観を、企業に納得させるのって、骨が折れるぜ?」
ガッツリとステーキを喰らう、夜吸さん。
「……ですよね。でも今の段階でも、納得してくれる企業は、ほんの少しはいると思ってます。もっと実力を付けて、漫画の人気を高めていけば、賛同してくれる企業もきっと増えると思うんですが……」
「そうだな。だがよ、漫画の生産効率の悪さは、いかんともし難いぜ。今や、動画なんざ毎日更新が当たり前の時代だ。それが週刊ですらなく、月刊に近い不定期更新じゃなあ?」
「はあ……やっぱそこ、メチャクチャ問題ですよね?」
「でもさ。どうやったて、漫画の場合限界があるよ」
萩原さんに指摘されるまでも無く、それは解かっていた。
「オレだったら、動画をやるかな? 企業からの案件も、今や動画に流れていってるしな。漫画の場合、鉱山を掘るようなモンだ。当たれば確かにデカいが、当たる可能性なんてとんでも無く低いぜ」
そう言った後、夜吸さんはボクにホークを向け言った。
「大体よ。お前が思う動画に無い、漫画の魅力ってなんだ?」
「それは、『世界を変える力』です!!」
ボクは、即答した。
「漫画は、サッカー、バスケ、テニスなどをヒットさせ、ブームを巻き起こしました。もっとマイナーな、囲碁や競技用自転車すら、大ブームにしたんです」
「そりゃ、とんでも無い確率の金鉱を、掘り当てた時じゃねえか!?」
「でも、やるからには、それを目指すんです。例えネット漫画雑誌であっても、できるのだと証明するんです」
夜吸さんのテーブルには、空の冷めた鉄板だけが残されていた。
「そっか、了解だ。お前、やっぱ面白いわ」
そう言うと、伝票を掴んでレジに向かった。
「あとよ、サッカー漫画のユニホームと、スノボ漫画のボードのスポンサー、見つけ出すぞ」
「そ、それって?」「ああ……営業するしかね~だろ? スポーツ用品店の、宣伝部か広告部に、営業かけまくるぞ」
夜吸さんは、今度こそ出て行った。