サッカー漫画
学校を出たボクは、流石に芽美たちと一緒に帰るワケにもいかず、そのまま一人で家路に付いた。
「また、コンビニにでも寄って行くか。夜吸さんか佐藤辺り、来てないかな?」
ボクは、やたらと出会いの多い、いつものコンビニに寄った。
「あ、夜吸さん……それに、佐藤も?」
まさかの、二人ともフードコートにいたパターンだった。
「おう。漫画、ご苦労さん。とりあえず、先方にOKもらえてよかったな」
「はい、有難うございます。その……失礼なことを言って、スミマセンでした」
「いいって、いいって。誰かに仕事を振る立場だと、ああなる時もあるさ」
夜吸さんは、当初の印象よりも気さくな人に思えた。
「佐藤も、久しぶり。バイト、見つかった?」
「い……いや。オレ、決めたんだ」
佐藤は、夜吸さんのとは比べ物にならない、ダサいメガネを光らせた。
「今度は、何を決意したんだ?」
「オ、オレ、もう一度、漫画家を目指してみようかと思ってるんだ」
「いやいや……そんなに、簡単に言われてもだなあ」
「オレ、お前の作ったネット漫画雑誌を見て、すげえって思ったんだ。ちゃんと、漫画もたくさん載ってるし、読者だって付いてる」
佐藤は、いつも通り真剣に言った。
「へェ。実はオレ、お前の雑誌読んでないんだよね……どれどれ?」
夜吸さんも、ボクのネット漫画雑誌をスマホで読み始めた。
「な、なあ。今さらかと思われるだろうが、オレも漫画を描いたら、お前の雑誌に載せてくれないか?」
「待て待て、佐藤。流石にもう、オレ一人のネット漫画雑誌じゃないんだ。クオリティの低い漫画は、載せられない」
「ああ、解ってるよ。下手な漫画を載せた日にゃ、読者にボコられんのはオレだからな」
そう言うと佐藤は、リュックサックから漫画のネームを取り出した。
「サッカー漫画か……芽美のと被るな。とりあえず、汚い字を補整して、何とか読まねばならんか?」
ボクは、佐藤の原稿に目を通した。
「こ、これ、意外に面白いじゃないか?」率直な感想だった。
「佐藤って、サッカーに興味あったっけ?」
「中学も高校も、三週間くらいサッカー部に在籍したぞ」
「三週間で、辞めたと言え!」ある意味、一貫した生き方だと思った。
「部活は辞めたが、プロサッカーリーグの観戦は好きでよく見に言ってるんだ」
佐藤の言葉通り、サッカーが好きだという気持ちが、伝わってくる漫画だった。
「このクオリティで本番も行ければ、ありかもな。芽美や、萩原さんにも、相談してみるよ」「ああ、頼むよ」
ボクは、コンビニのコピー機で、ネームを何部かコピーした。
フードコートに戻ると、何故か夜吸さんが近寄って来た。
「な、なあ。お前のネット漫画雑誌に載ってる漫画、誰が描いてるの?」
「へ? それは、芽美に、萩原さん、あと市川さんってコですね」
「なんか、女っぽいんだケド?」「はい、実は全員、女子高生なんですよ」
「なん……だと!!?」
夜吸さんの、グラサンの向こうの表情が変わった。