漫画の報酬
「いやいやいやいや。フリーランスなんて、頭の悪い兄ちゃんか、将来終わってるオッサンしかいねえモンだろ? 女なんてマジでいんの?」
夜吸さんは、差別と偏見のかたまりのような発言をした。
「フリーランスって言っても、漫画家の場合はそんな言葉が成立する前から、あった職業ですからね。同人も盛んですし、きっと女性の割合が多いんですよ」
ボクは、自分の見解を述べる。
「そ、そうかそうか。オレとしたコトが。女子高生と言っても、肩書きだけ女子高生なんだろ?」
「いや、それがですね。けっこう可愛い子も、いるんですよ」
何故か佐藤が、割り込んできた。
「お前、もしかしてそれが目的だったのか? 悪いんだが今、そのコトで芽美たちの学校の担任に、呼び出されていたところなんだ」
「そのコトって、なんだ?」夜吸さんが問いかけて来た。
「え? だから、ボクのアパートで、女子高生が漫画を描くのは良くないって……」
「お、お前、まさか自分のアパートに、女子高生を連れ込んでやがったのか?」
夜吸さんのサングラスの向こうは、おそらく真顔だった。
「ひ、人聞きが悪いですね! 彼女たちは、漫画を描きに来てるだけですよ。パソコンだって、ボクの部屋にある二台のディスクトップを使った方が……」
「で、学校の担任とやらには、それがマズいと言われたんじゃねえの?」
「ま、まあ、そうなんですが……」
「それじゃあ、これからネット漫画雑誌の制作は、どうすんだよ?」
佐藤が必死に訴える。
「それぞれで進めて、コピーかデータだけ貰うしか……」
すると夜吸さんが、おもむろに言った。
「だったらお前、オフィスを構えればいいんじゃね?」
「いやいや、ムリですよ。そんなに稼いでもいないですし」
「すぐに稼げそうだケドな。とりあえず、こないだの漫画のそっちの取り分、二十万でいいよな?」
想定したより、全然上の金額だった。
「ま、こっちも、安く買い叩かれないように、情弱な企業を狙ってセールスかけてんだ。1ページ三万は相場だが、それは漫画制作会社の場合であって、クラウドソーシングサイトを使えば、安くは探せる」
「でもそれって、ピンキリですよね」「そりゃそうだろ。オレなんか昔、漫画を描いたコトも無いヤツと契約しちまって、とんでも無い目に遭ったからな。最初は気合だけはあったんだが、途中でもう描けませんっとか、言い出しやがって……」
「漫画を描くのって、大変ですからね」
「もう、素人とは契約しねえ。かと言って、上手いヤツにはいつも客が付いてるし、逆にこっちが足元見られっからな」
「それでボクらは、最適だったと?」「まあな。一人の漫画家じゃなく、組織ってとこもメリットなんだわ。人海戦術も使えるだろうし、一人の漫画家が逃げても他でバックアップできっからな」
夜吸さんは、意外にも漫画について、詳しかった。
「夜吸さんって……もしかして……?」
「ああ……漫画家を目指してた。そんな、青臭い時代もあったっけかな?」
その時、コンビニのドアが開いた。