普通の女子高生
「おお、温泉合宿っスか!?」
「それ、いいですね。土日であれば、問題は無いのですが?」
池田さんが言った。
「本来は市川さんの漫画の取材だからね。当然、土日で話をしてあるよ」
女子高生である市川さんのスケジュールからすれば、当然のコトだった。
「さ、さすがは社長さんです。佐藤先生も行きますよね?」
「お、おう……行こうかな」
池田さん相手に、断れない佐藤。
「も、問題もあるぞ。元は市川さんと田中さん、オレのみの予定だったんだ。これだけ大勢でとなると……」
「問題ねェってよ。今、宇津井さんに連絡してみたら、OKだとさ」
「さ、流石は夜吸氏っス! やるコトが、早いっすねえ?」
「ま、向こうの本音はさ。最近はスキーやスノボの客も減って、ゲレンデも低迷してるトコ多いから、少しでも客を呼びたいんだろ?」
「でも、大型スポーツ量販店を経営している企業の好意で、連れて行ってもらってるのに、誰もスノボもスキーもやらないのは……」
「流石にどうかしてるっスね……」
「ま、オレはスノボはやってたからな。付いて行ってやるぜ。お前はどうなん?」
「は、恥ずかしながら……どちらもまったく滑れません」
実は、今どきゲレンデすら行ったコト無いのだ。
「ち、ちなみに、他にスノーボードやスキーの経験者はいるのか?」
ボクの質問に、誰日一人として手を挙げなかった。
「あ、イリアはやってるって、言ってました」
市川さんが言った。
イリアはフランス人で、元は市川さんの学校に留学していたが、現在は帰国しネット経由で漫画を送ってもらっている。
「流石にフランスから呼ぶワケにも、行かんだろ」
「それならこの際、みんなで経験してみるのはどうよ?」
そう言ったのは、萩原さんだった。
「おお、萩原と今井っちも来たっスか?」
「はい、来ました。原田先パイ!」
「やっぱ二人も、スノボやスキーの経験無いっスか?」
「あるケド、小学校入る前くらいだったからな。あんま覚えてないや」
萩原さんが言った。
「でも、ウェアやスキー、スノーボードは……」
「そりゃ、他で買ったら殺されるっスよ……」
「だな、アホな質門した」
「でも、どうせ買うなら、カワイイのがいいよね?」
「ですね」「だったらこの後、お店行ってみない?」
女子トークに花を咲かす、少女たち。
「こうしてみると、ただの女子高生たちですね」
「ああ……普通のオッサンなら、営利目的で動くところだが……」
「ただ青春を愉しんでいる、普通の女の子たち……」
彼女たちは、漫画で収入を得られたとしても、それはアルバイトの延長線上くらいにしか思っていないのだろう。
自分で生活費を稼ぐ必要のある、大人とは違うのだ。
「ウチがやっていけてるのも、そのお陰なんですケドね……」
ボクは心から、彼女たちに感謝した。