それぞれの想い
「そんなアタシの漫画でもっスね。最近、面白いって言ってくれる読者さんが、出てきたんスよ」
「だ、だから、それはキミの漫画の力が……」
「アタシの、漫画の力だけじゃ、どうしようも無かったんスよ!」
芽美は、悔しそうに言った。
「原田には悪いケドさ。やっぱ、ネット漫画雑誌に連載した影響力が、大きいと思うよ」萩原さんが、冷静に指摘する。
「集中的に漫画を載せ、その雑誌をみんなでSNSを使って宣伝するってやり方は、理にかなってます。ほぼサポートのわたしたちだって、雑誌に人気が出るが楽しくて仕方ないんです」
山口さんが、いつになく熱く語った。
「そ、そうですよ。わたしも、最初はどうかなって思ったスノボ漫画ですが、今は主人公のサムライに愛着、沸きまくりなんですから」
市川さんも、作品に対する思いをぶつけて来た。
「それに、ネット漫画雑誌はもう、お兄さんだけのモノじゃないんですよ?」
大野さんは童顔だが、時折ものすごく的を射た発言をする。
「アタシもたぶん、自信なんて無かったんスよ。先パイに、漫画の描き方のコツとか教えてもらっても、誰も読んでくれない。賞にも何度も、落っこちたっス。頑張って描いてるのに、けっこう落ち込むんスよね……」
「芽美……」ボクは、初めて彼女の弱さを知った。
「お兄さんも、やっぱ大変だったっスか? 一人でネット漫画雑誌を組んで、一人で会社や仲介業者と付き合って……」
「そうだね……正直、大変だった」ボクは、本音を言った。
「始めた時は、軽い気持ちだったんだ。でも、色々と解らないコトだらけで、どれが正解なのかも解らない。雑誌の方向性とか、企業との付き合い方とかさ」
「それ、アタシも同じっスよ。漫画だって、正解なんて無いっス」
芽美は、ボクのおでこに自分のおでこを当てて来た。
「でも、アタシの描く漫画のキャラは、アタシの描いた漫画世界の中で、頑張って生きてるんスよ」
「そっか……。やっぱキミの描く漫画は、面白いよ……芽美」
「……アリガトっス」ボクはおでこに、軽くキスをされた。
「アタシ、思うんスケドね。確かにアタシたちは、ずっと女子高生じゃいられないっス。でも、ウチの部活にも後輩は入って来るんスよ」
「なる程ォ。入って来た後輩たちを、強制的に雑誌にブチ込めば……」
萩原さんは、とつぜん過激なコトを言い出した。
「いや、強制は良くないよ。でも、世代交代ができるくらい、ボクのネット漫画雑誌に魅力はあるのかな?」
「たぶん、大丈夫っスよ」芽美は、優しく微笑んだ。