漫画と金儲け
漫画:萩原さん、原案:ボクの『ヴァンパイア探偵』は、かなりのヒットとなった。
「やっぱ探偵ものって、ある程度の需要があるとは思ってたケド、予想以上の反響だね」
萩原さんが、機嫌良さそうに笑った。
「主人公が色白の優男で話にあんま関わらず、基本は姉の失踪の謎を追う双子姉妹の目線で、話しが進むんだが……」
「逆に、二人の女子高生目線が、共感呼んでんだと思うよ。それにこのメカ好きの妹の方、もしかしてアタシがモデル?」
「それ考えたの、高校から大学の間だぞ。まだ、知り合ってもいないわ」
「そんなんだから、Fラン大卒で、新卒棒に振ったりするんだよ」
「うっさい。しかし、良く喰うなあ」
「あたしには、これくらいのご褒美が、丁度いいのかなってね」
ボクはファミレスで、チーズハンバーグランチをおごらされていた。
「結局、漫画を十ページ描いて、二十万も貰えてもさ。それが継続されるワケでもないんだよね」
萩原さんがハンバーグを真っ二つに斬ると、中から肉汁とチーズがとろけ出る。
「そ、そうなんだ。だから、企業に連載を貰う必要がある。しかも、出来る限り大手じゃないと、継続してお金を支払うなんて、不可能なんだ」
今は自分たちで、勝手に描いているだけで、企業から受注して連載しているワケでは無かった。
「わたしも漫画家になれれば、自分が個人事業主になるんだよね? そうなるとアタシが、アシスタントにお金を払ったりするんだ?」
「そうだな。けっこう、持ってかれるぞ」
「正直、二十万ってさ。大金と思ってたけど、マジで経費払ったら、直ぐに無くなるよね」
「キミたちに、マジに経費を払えと言われたら、ボクは破産するな」
「今の、ウチの雑誌の収入って、どれくらいあるの?」
「比較的安定してる、アフィリエイト収入が、全員のを合わせて月に3万くらい。他は、企業案件の漫画を描いたときのみ、利益が出る感じかな」
「やっぱ、考えないとだよね?」「そうなるな」
すると、ファミレスのドアベルが『カランカラン』と鳴り、サングラスの男が入って来た。
「あ、夜吸さん。お久しぶりです」「おお、久しぶり」
夜吸さんは、ボクの隣の席に座った。
「実は、ここに居るって聞い……お、このコ、可愛いじゃん? お前の彼女?」
「ち、違いますよ。IT企業漫画を描いてくれた、萩原さんです」
そう言うと何故か、萩原さんの表情が曇った気がした。
「こんな可愛いコが描いてくれてたなんてな? もっと、ふっかけてやりゃあ良かったあ?」
夜吸さんは、ドリンクバーとステーキセットを頼んだ。
「で、ボクに用があったんですよね?」
「ああ……お前んとこのサッカー漫画、人気だよな? アレのユニホームの胸によ、企業ロゴ募集しない?」
それはボクも、考えていた案だった。