企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)058話

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ヴァンパイア探偵

夕焼けで紅く染まる公園は、まだ子供たちのにぎやかな声が聞こえてくる。

 

「相談……ってやっぱ、漫画のコトだよね?」

ボクは、萩原さんに問いかけた。

 

「そ、そうなんだ。スランプって言うか……さ。大野の言葉通りでしゃくだケド、元々あたしにストーリーなんて、描けなかったんじゃないかって」

元気のない萩原さんを、ボクはベンチに座らせた。

 

「例えばだケド、萩原さんってパソコン得意だよね? パソコン関連を題材にしてみるとか、どうかな?」

「リアルなパソコンなんて、描けないよ。それに、話しもイマイチ思いつかない」

 

どうやら、既に試していたコトの様だった。

「そ、それなら、芽美に教えてもらった、鉛筆を……」

「それもダメ。鉛筆がスランプみたい」

 

彼女には少し、発想力が足りないのだと思った。

「やっぱアタシって……漫画、向いてないのかなあ? 原田や、市川さんみたいに、根っからの漫画好きとは、違う気がするんだ」

 

ヒザを抱え、ベンチに座る萩原さん。

「企業漫画描いて、いっぱいお金を貰って浮かれてたケド、それもネームは原田が描いてくれたんだよね」

 

「どうかな? 正直に言えば萩原さんは、デジタル絵に関してはかなりのレベルだと思うよ。絵もキレイだし、話もまとまってる。キャラの配置や、コマ割りもキレイだし、吹き出しに入る文字も、一番入れやすかった」

 

「結局それって、言われたコトしか出来ないってコトじゃん。やっぱアシスタントが、関の山ってワケかあ?」

萩原さんは、足をバタバタさせて夕焼けを見上げた。

 

「イヤ……そうじゃない」「いいよ、なぐさめは。返って辛くなるよ」

萩原さんはこの時、本当に泣いていたのかも知れない。

「たぶん……だケドさ」ボクは彼女の方を、あえて見ないように言った。

 

「漫画家の中には、原作者がいた方が、生きる漫画家も居るんだ」

「原作者?」「たまにあるだろ? 原作と漫画が別々っての」「ああ」

萩原さんは、うなずいた。

 

「つまりわたしは、誰かの原作とか描く方が、向いてるってコト?」

「そうじゃないかなあ? そこで……なんだケド?」

「ん? そこで……どうしたの?」

 

「オレが原作じゃ、ダメかな?」「へ……ええッ!!?」

萩原さんは、顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「お、お兄さんが原作で……ア、アタシが、漫画描くのぉ!?」

 

「実はさ、前々から描こうと思っていた、ストーリーがあるんだ。でも、オレの画力じゃ、ちょっと微妙なんだよね?」「ど、どんな話?」「探偵もの」「聞かせて!」

ふと横を見ると、間近に彼女の顔があった。

 

「導入は、ある女が誰かに追われているところから始まるんだ。その探偵は、夜にしか活動しないから、人々は彼のコトを……」

萩原さんに、自分の考えたストーリーを伝えた。

 

「ヴァンパイア探偵……なんか、凄いね! 面白そう!!」

 

萩原さんの顔に、笑顔が戻っていた。