推理モノの描き方
ボクは繁華街の電気店で、二人の女子高生がレジに並んでいるのを見かけた。
ボクが原作の『ヴァンパイア探偵』を描いてくれている萩原さんと、そのアシスタントをやってくれている後輩の今井さんだ。
「あ、萩原さんたちも来てたんだ。さっそく、最新のCPU買ってるんだ?」
それは、ボクも狙っている最新世代のCPUだった。
「うわあ、お、お兄さん!?」「しゃちょー!!?」
とくに萩原さんは、何故かかなり驚いていた。
「オレは、組んだばかりだし、あまり予定も無いんだが……」
実際には、思いっきり興味があったが、そう言うのもみっともない。
すると今井さんがボクに言った。
「しゃちょーはどうして、パソコンショップに?」
どうも、今井さんの発する『しゃちょー』というセリフも、始めて合ったときより軽くなった気がするのは、気のせいだろうか?
「少し時間が空いたから、気分転換だよ。芽美が新連載の執筆に取り掛かってさ。アイツはアイデア出しやネームに没頭する性格だから、仕方なく一人で繁華街に……」
自分で言っていて、どう聞いてものろ気話にしか聞こえない。
「つまり、彼女にかまってもらえないから、ヒマ潰しですか?」
今井さんは、身も蓋も無い言い方をした。
「そ、そんなんじゃ……ところで二人は、これから自作でもするの?」
「いやあ……CPUだけ衝動買いしちゃっただけで、そんな予定は……」
「アレ……萩原さん、もしかして調子が悪い?」
萩原さんは、顔も赤い気がしたし、気分も落ち込んでる感じがする。
「そ、そんなじゃないって!!?」
元気に言い返された。
「しゃちょーも、唐変木系男子ですねえ」
「なにソレ? 最近の女子高生の間じゃ、流行ってるの?」
「別に流行ってませんよ……それより、原田先パイだけじゃなく、そろそろ自分たちも漫画の連載について考えてるんですケド」
「そっか。今井さんたちもそりゃ、自分の連載持ちたいもんな」
「ひえ。今でも毎月アップするの大変なのに、今井が抜けたら厳しいよ」
萩原さんが、泣き言を言った。
「萩原さんも、アシがいるのに慣れちゃったか……」
「ぬるま湯って、慣れるモンでしょ!?」
「別に責めてないよ……ムリを言ってるのは、オレの方だし」
「いや……まだ自信ないですし、当分はアシを続けますから」
「そお? ならいいケド」「それで、今井さんはどんな漫画を描きたいんだ?」
「探偵モノ、推理モノですね。自分も、しゃちょーみたく原作何本か描いてみたんですケド、上手く行かなくて……」
「そっか。推理モノって難しいよね」
「しゃちょーは、どうやって原作考えてるんですか?」
「え、オレ? そうだな……まず犯人決めて、そこから容疑者を五~六人決める。そこから犯人との関係性を決めて、動機を作っていく感じかな?」
「やっぱ、しゃちょーって出来る男ですね?」