三人の後輩
「さ、さすがは社長。見事なアドバイスです」
大野さんの後輩の、田中さんが言った。
「自分もそう思います。原作を描いて、編集もできて、担当もこなせるなんて」
今井さんも、なにやら瞳を輝かせている。
「やっぱできる人は、違うね。クラスの男子が子供に見えちゃう」
池田さんの目には、ボクはどう映っているのだろう?
彼女たちの中で、最近までニートをやっていて、ボロアパートでダラダラしていたヤツの評価は、恐ろしく膨らんでいるように見えた。
「いや、オレは大したコト無いよ。ネット間案が雑誌は軌道に乗っているのも、みんなの先パイが、一生懸命に漫画を描いてくれたお陰なんだ」
「確かに、先パイたちもスゴイと思いますが」
「社長さんも、スゴイですよ」
「だって、企業さんとも社長さんが、お付き合いされてるんですよね?」
「ま、まあね」
社長と呼ばれるのは、ものスゴク違和感がある。
「と、ところでみんなは今、アシスタントをしてくれてるの?」
「自分は尊敬する萩原先パイの漫画の、背景とか描いてますね」
今井さんが言った。
「それじゃヴァンパイア探偵の、背景描いてくれてるんだ」
「はい。自分も萩原先パイみたく、パソコンとか得意な方なんで、デジタルで写真とか参考にしながら仕上げてます」
「わたしは佐藤先生のサッカー漫画に憧れて入ったんですが、残念ながら男である先生とは、仕事場は別ですからね」
池田さんが言った。
「ああ、アイツはオレのアパートが仕事場だからな」
「でも、先パイたちの時代は、一緒に作業されてたんですよね?」
「ま、まあね。芽美たちに担任からクレームがあったからね」
「いいなあ、わたしも佐藤先生と、一緒に仕事してみたかった」
佐藤のヤツも、池田さんの頭の中では、かなり性能を盛られている。
「わたしは、市川先パイのアシをしてます」
田中さんが言った。
「でも、市川さんは他の学校だよね?」
「萩原先輩のマンションにはよく来るので、そんなに問題は無いですよ」
「そっか。実は萩原さんのマンションって、言ったこと無いからな。どんな風に作業してるのか、想像がつかないよ」
「そ、その辺は……普通ですよ、普通」
田中さんの口ぶりから察するに、あまり普通には思えない。
「実は市川さんは今度、スポーツ用品の大手ショップの運営会社と、契約することになってさ」
「はい、さすがに知ってますよ」
「それなんだケド、企業側が使ってくれと言ってきてる、スノーボードのデザインが複雑でさ」
「どんなのですか?」「実物はまだ見せれないんだケド、こんな感じ」
ボクは田中さんに、企業のオリジナルブランドの、カタログを見せる。
「た、確かにこれは……複雑ですね」
「今、企業側に、実物写真の使用をお願いしてるんだケド、もし無理なら……」
「これを、描くしかないってコトですよね?」
田中さんは、みけんにシワを寄せた。