中小企業のやること
正直、ボクは疲れていた。
「やっぱ、中小企業の社長さんの大変さが解るよ。時給換算すれば、確実にバイトのが時給高そうだ」「マジで!?」
ボクのネット漫画雑誌は、ボクが当初思ってたよりも成功している。
けれども今のところ安定した収入は、月に20万のスポーツ用品ショップの運営会社のスノボサムライ漫画一本であり、他はアフィリエイトなどの収入のみだった。
「ゴメンね、わたしがちゃんと、原作を書ければ」
「いや。『ヴァンパイア探偵』は、高校のときに、ホントに漫画雑誌に投稿しようと思って描いたモノなんだ」
それは、懐かしくも歯がゆい思い出だった。
「当時はまだ、オレ自身の実力不足や、漫画の知識の無さもあってね。けっきょく描きもせずに、お蔵入りにしちゃったんだ」
「そうなんだ。でも、どうして描かなかったの?」
「言い訳をすれば、大学受験もあったし、シナリオのクオリティに合った絵を、描く自信が無かったからかな」
ボクは、萩原さんと歩きながら、自分の過去を思い出していた。
「結局、大学もFラン大に入っただけだし、大学ではヒマを持て余していた。今考えれば、もっと真剣に漫画を描く時間は、たくさんあったハズなんだ」
さらに言えば、大学を出てからはニートなワケで、大学時代以上に一日中ヒマだったのだが、その辺はお茶を濁す。
「お兄さんも、色々とあったんだね。でも、お兄さんが仕事を取ってきてくれるから、やりがいがあるっていうか、漫画に専念できるっていうか?」
「でも萩原さんも、市川さんも、来年は受験だよね?」
「ま、わたしは元々成績が良い方じゃないし、原田もまあ似たり寄ったりな感じだケド、市川さんはきついかもね」
「どうするかなあ。スノボサムライは、市川さんの作品だ。他の人が描けばいいって話でもないからなあ」
「いや……アレ、クオリティ高いよ。描ける人、ほぼ居ないって」
「だよなあ。実は他にも問題があってさ」「ああ、前言ってた税金関連の問題ね?」
「やっぱ、申告とかしないとダメなの?」
「市川さんのスノボサムライも、萩原さんのIT企業の漫画も、収入が発生しているからね。年に三十万以下くらいの年収なら、申告しないって話も聞いたケド」
「年末までに半年、市川さんの漫画でちゃんと収入だ入ってきたら……」
「実は、夜吸さんに支払う十万は、いったんこっちに入れてるから、最悪一ヵ月で税金を申告するラインに到達する」
「何にしても、一度、税務署に相談に行った方がいいかもね?」
「萩原さん、付いて来てくれる?」「はあ……な、なんで、わたしが?」
「一人だと、お役所って不安なモノなんだよ」
「何言ってんの、いい大人でしょ?」
「今時いい大人でも、何百万人とニートやってるぞ?」
「はいはい……でもね。付き合ってもらうなら、山口のが適任でしょ?」
「う、うん……それもそうか?」
ボクは、成績優秀なメガネ女子に、相談を持ち掛ける事にした。