企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)070話

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漫画の精密描写

夜吸さんは、相変わらずテキトーなコトを言いながらも、ボクたちを本当に焼き肉に招待してくれた。

 

「やっぱ、お前は使えるわ。まあ、喰え。市川ちゃんも、遠慮しなくていいよ」

「は、はい。では、いただきます」

 

市川さんも、緊張の糸がほどけたのか、夜吸さんが注文する焼き肉の皿を、ドンドン空にした。

焼き肉以外にも、ビビンバやスイーツなども、うれしそうに口に運ぶ。

 

「よ、よく喰うな、市川ちゃん!?」

「昨日もファミレスで、たくさん食べたたケド、そんなに食べて大丈夫?」

 

「はあ。打ち合わせが終わって、ホッとしたんで、つい……」

市川さんは、ようやく自分がたいらげた、皿に目を向けた。

 

「あ……あの、実はわたし、太りやすい体質なんです……」

「そ……そう? 」

「お、お兄さん……どうして止めてくれなかったんですか?」

 

「え、いや……うれしそうに食べてたから?」「ヒ、酷い!?」

ボクは女の子の逆鱗が、どこにあるのかすら解らなかった。

 

家まで歩くと言い出した市川さんを、強引に地下鉄に乗せ家まで送る。

その頃には、日が陰っていた。

 

「さて、今日はもう寝たいところだケド、萩原さんの『ヴァンパイア探偵』の原作者はボクなんだよな。締め切りから逆算すると、明日には渡したい」

ボクは、ボロアパートでパソコンに向かった。

 

「う……も、もう朝か? 原稿は終わったケド、メール来てるな……」

パソコンに、宇津井さんからメールが届いていた。

 

「夜吸さんも言ってたけど、スノーボードのデザインって複雑だから、いちいち描いていたら、女子高生の市川さんには時間的に厳しい」

ボクは宇津井さんに、ボードの写真の使用許可を打診していた。

 

「解ってくれるかなあ。ボードを描くだけで、丸一日かかる場合もあるからな」

メールを開くと、写真にも著作権があり、少し時間が欲しいとのコトだった。

 

「ま、まだ望みはあるか?」

もし写真の使用許諾が下りない場合、ボクが描くのが一番てっとり早いと思っていた。市川さんは、女性にしてはリアルな絵もカバーできる実力がある。

 

けれども動きの多い、少年漫画的な描写は、やや苦手としていた。

「動きの多い漫画で、面倒臭いデザインのボードを……ね。描くにしても、リテイクとかされなきゃいいケド」

 

ボクは思い足取りで、打ち合わせに向う。

案の定、写真の使用許諾はまだ未定だった。

 

「とにかく漫画において、精密描写は時間がかかってしまうモノなんです。どうか、お願いいたします」

社長と専務にも頭を下げる。

とくに、専務はいい顔をしなかった。

 

数時間の会議に参加した後、ボクは萩原さんに会って原稿を渡す。

「お、お兄さん……疲れてない!?」

彼女は言った。