漫画の報酬
次の日、ボクは佐藤を引き連れて、芽美たちと会った。
場所は、コンビニのフードコートだった。
「もう、店員さんとも、顔なじみだな」
「ところで、お兄さん。また、夜吸氏と会ったっすか?」
「ああ……どうして知ってるんだ?」
「それがさ。乃梨ちゃんに、注意されたんだよね。夜吸さんは、お兄さん以上に危険だから、絶対に気を許すなって」
萩原さんが言った。
「ボクも、ずいぶん危険な人物扱いなんだが?」「男は危険危険っス!」
「その夜吸さんからなんだが、萩原さんが描いたIT企業漫画の報酬が入ってた」
「ウソ! で、幾らになった?」「ご、五千円くらいっスか?」
「いや……二十万」「ふぇ?」「い、今、なんて言ったっスか?」
「だから二十万だよ。夜吸さんはページ数アップの段階で、三十万で受けたらしい」
「そ……それって、1ページ、に……二万?」「そうなるね」
「ア、アタシが描いた漫画が、1ページ、二万? だってそれ、グラボやCPUが買えちゃう値段よ?」
「は、萩原は、相変わらずパソヲタっスね。でも、アニメ見放題の契約、三年以上分っスよ!?」「安いスマホなら買えるわ」「ステーキにうな丼も、行ける?」
芽美も、山口さんも、大野さんも、興奮を隠せないでいる。
「そ、そんな価値が……あ、あると思う?」萩原さんが、ボクを見た。
「ボクは、あると思うよ」「ふぇ」萩原さんは、何故か急に赤くなる。
集まった四人の女子高生は、明らかに表情が違っていた。
「や、夜吸さんって、意外にやるじゃん」「そ、そおっすね?」
この間まで、散々罵倒していたのがウソのように、評価が反転する夜吸さん。
「こ、これからは、プ、プロっスよ? お金を貰ってる以上、ヘタな漫画は描けないっス!」
「そ、そうだね。わ、わたしももっと、頑張らなきゃ!」
「ところでお兄さん。その企業漫画なんですケド……」
山口さんが問いかけてきたが、なんとなく言いたいコトは解かった。
「先方の企業さんからOKが出てね。ウチの雑誌で載せてもいいってさ」
「ホ、ホント、お兄さん!?」「ああ……本当だ」
「こ、これは、気合入れて、宣伝しないとだね?」「う、うん!!」
山口さんと大野さん、二人の広報担当も、気合十分だった。
「あ……あのさ。そろそろ……」
ボソリと声が聞こえた。
「あ、佐藤。スマン、忘れてた」
ボクは本当に、佐藤の存在を忘れてしまっていた。