漫画家の苦悩
「漫画以外って言っても、なにするっスかねぇ?」
アタシは、とりあえず腕を組んで考えてみる。
とりあえず、家の本棚にある本を読んでみる。
「アッハッハッハ、この漫画やっぱ面白いっスねえ」
面白い漫画は、何度読んでも面白いと思った。
「いか~ん、人の漫画を面白いと思うのなんて、誰だってできるっス。市川や佐藤先生みたく、人が読んで面白いと思える漫画を、自分で描かなくっちゃ駄目っス!」
とりあえず、寝そべって部屋を上下反転してみてみる。
「いくら見ても、アタシの部屋の本棚には、漫画しか並んで無いっスねえ」
仕方がないので、兄貴の部屋を物色しに行くコトにした。
「ねえ、兄貴。新作漫画の材料になる本とか、無いっスか?」
「おわァッ、おま……いきなり入ってくんなって、言ったろ!!?」
「連載が終了しちゃったから、次の連載のネタを探してるんスよ」
「人生全て、漫画かアニメかゲームに捧げてきたお前が、一番最初に連載終わってるのな?」
「ウ、ウッサイ! 人が気にしてるコトをっス。お兄さんとは、大違いっス!」
ウチの兄貴は、気が短くて人間として器が小さい。
「な、なあ……お前さ。アイツ……鷹詞のヤツと付き合ってるって、ホントか?」
「ホントっすよ。まあ、漫画好き同士なんで、普通の恋人とは違う気もするっス」
「と、ところでお前、ホテルまで行った……とかは、無いよな?」
「いや、あるっスよ?」「や、やっぱ、あるのかよ!?」
「今どき、高校生にもなれば、とーぜんっすよ」
「まさか二次元人のお前から、そんな台詞を聞くとはな……」
「でも鷹詞ったらあの時は、酔った勢いで部屋を汚しまくったり、色々巻き散らかしたりで、大変だったっスよ」
「ア、アイツ、どんなプレイッ!!?」
「それより、漫画の資料になりそうな本とか、無いっスか?」
「漫画の……? 野球の本ならあるケド……」
「却下っス。ルール解らないし、理解してもリアルに描ける自信ないっス」
「じゃあ、将棋や囲碁……」「もっと詳しい人が、先に描いちゃってるっス」
「鉄道なんかは……」「電車描くのに、どれだけ時間がかかるっスか!」
「お前、そんなコト言ってたら、なにも描けないぞ?」
「そ、そ~ッスけど、たぶんイケるって思った漫画じゃないと、ダメなんスよ」
「とりあえず、描いてみるじゃダメなのかよ?」
「今の読者は、そんなんじゃ納得しないっス。それに、SNSで散々バカにされたから、凄い連載を書いて、見返してやりたいっス!」
「そんじゃ、アイツの漫画でも描いてみたら?」
「え……?」
アタシは、初めて兄貴の意見に驚いた。