企業漫画と数字
「企業にとって、自社の商品、サービス、店舗を宣伝するのは、当たり前の行為だ」
ドリンクバーを汲みに行った夜吸さんが、戻ってきて言った。
「街の小さな飲食店や、小売り業ならいざ知らず、大手になればなる程、多額の広告宣伝費をかけてくる」
「それって広告や宣伝に、価値を見出しているからなんですよね?」
「そうだ。逆に言えば、小さな企業は解かって無い場合が多い。未だに良い商品さえ作れば、勝手に売れると思ってる企業もあるからな」
「良い商品やサービスを、世間や市場に認知させるために、大手企業は広告宣伝費を使うんですね?」
「だがそうは言っても、企業が出せる広告宣伝費も限られてる。つまり奪い合いだ」
「テレビCM、新聞の折り込みチラシ、インターネット広告、企業はどれが効率的で、自分の企業の商品に適しているかを、必死になって模索している」
「つまりそこで、漫画がどれだけ、広告媒体として優れているかを示さないと、いけないワケですよね?」
「まあ、そうなんだがな。企業ってのは、数字を欲しがる場合が多いんだ」
「数字……ですか?」ボクも、トーストを食べながら答える。
「どれだけ宣伝効果があるのかのグラフや、集客効率のパーセンテージとかよ」
「それって……漫画だと、どうなんですかね? 正直、数字なんて未知数過ぎて出せませんよ」
「企業漫画の制作会社は、胡散臭い数字、出してやがるケドな。どれだけ正確かは、怪しいもんだぜ」
「数字を示せって言われた場合、どうするんですか?」
「そりゃお前、早々に切り上げて、次を探すしかねえ。ネットでそれらしい数字とか、見つけられなくもないが、アイツら細部を付いて来たりするからよ」
「実際、数字ってそんなに大切なんですか?」
「販売台数なんかの統計学的数字なら、大切なんだろうがな。漫画みたいな媒体で、果たしてどこまで数字が大切なのかは、知らん」
「でも、それだと今日は決まらない可能性も……」
「当たり前だ。大体、一社で契約が取れるなんて、甘々なんだよ」
「そうですね。そろそろ、行きますか?」
「そうだな。時間は、時間通りがベストだ。実は早すぎても、嫌がられたりする場合もあるからよ」
「やっぱ、そうなんですね? 漫画家も原稿を取りに行く場合、早く行くなんて絶対ダメだと、芽美が言ってました」
「いや……たぶん、そこまでじゃね~から」
ボクは夜吸さんと、スポーツ用品の企業に、漫画を売り込むために向う。
店舗は、広いゆったりとした店だが、オフィスは大きなビルだった。
今回辺りのお話のモデル漫画
実はスポーツDEPOさんに、こんな漫画を提案しようと描いてみたモノです。