企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)061話

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交渉術

結局、漫画にしろ芸にしろ、クリエイティブなモノがいきなり安定っした収益を上げるコトなど、ほぼ無いのだ。

 

「地道に、今あるコンテンツを収益化して行くしかないんだろうな」

ボクはファミレスから帰ると、久しぶりに就活の時に使ったビジネススーツを引っ張り出す。

 

翌朝、駅で夜吸さんと待ち合わせる。

駅は、子供染みた逃避行の時以来だった。

 

「おう、早いな……って、お前、ビジネススーツで来たのかよ?」

「き、気合を入れようと思って……」

夜吸さんを見ると、皮ジャンにサングラスのままだった。

 

「スーツなんてのはな。相手の意見を、全部言いなりに受け入れるってあかしだぜ。そんなのは、サラリーマン営業の着る服だ。こっちは、デザイナーなんだからよ。もっとラフな格好に変えて来い」「は、はい」

 

ボクはそんなモンかと、言われた通りアパートに帰って着替えをした。

「お前、私服でもかなりフォーマルに寄ってんな?」

「そうですか?」「まあいい、さっきよりマシだ」

 

ボクと夜吸さんは、電車に乗った。

既にラッシュ時間は過ぎており、二人で座っても余裕で周りの席は空いていた。

 

「お前はさ。あの女子高生どもの漫画を、いかに高く売るかを考えなきゃならない。金に固執するのは悪だってヤツもいるがよ。だったらお前の金、全部よこせって言ってやるのさ。本気で金に興味が無いなら、問題無くよこすハズだかんな」

 

夜吸さんは、持論を展開した。

「昔のボクだったら、そう思っていたのかも知れないです」

「そっか……で、今は?」

 

「今は、芽美や萩原さんたちが一生懸命に描いてくれた漫画を、安く売る気にはなれなません」

ボクは、キッパリと言った。

 

「よっしゃ、あのファミレスで時間潰しだ。話をどう持って行くかの打ち合わせも、しないとな」「了解です」

ファミレスはまだ、モーニングの時間帯だったので、二人ともモーニングビュッフェを注文する。

 

「夜吸さん。先方の企業に、アポは取ったんですか?」「流石に取らないと、フリーランスなんて会ってもくれんのでな」「でも、今から行く企業って、けっこうな大手ですよね?」「少し落ち目ではあるが……一部上場企業だからな」

 

ボクたちが向かおうとしているのは、各ジャンルのスポーツ用品を取り扱った、大手企業だった。

 

「とりあえず、スポンサーに付いてくれそうなのは、スノボサムライと、メガネの兄ちゃんのサッカー漫画だ。会うのは、広報担当。もし先方からの要求があれば、他の漫画も描けるか?」

 

「誰かが描けると思います」「まあ、あれだけ漫画家を抱えてりゃな」

「そういえば夜吸さんは、個人の漫画家に依頼して、失敗したと……」

「交渉前に、最悪なコト思い出させるんじゃねえよ、まったく」

 

夜吸さんは、重なったホットケーキをフォークで突き刺した。