Fラン大生の共同作業
ボクと佐藤は、連日のようにストーリーを練り、キャラを考え、ネームを突き詰めた。
「ここは、こんなキャラがいいんじゃないか?」
ボクがラフで、キャラを描き上げる。
「おお、いいんじゃないか? つか、お前もやっぱ、けっこう描けるのな」
「これでも芽美たちに、アシでこき使われて、モブとか描いてるからな」
「ところでよ。ネームがもう、100ページを超えてるぞ?」
「超えてるな……キャラも、こんなに要るのか、佐藤?」
「おいおい、オレはお前のアドバイスを受けてだなあ?」
「悪い悪い。いい加減、ペン入れに入るか?」
「おお、そうんだな。今日はまず、1ページを目標にしよう」
「ああ、それな。芽美の話じゃ、リアルペン入れは、インクが乾くまでの時間とかあるから、3枚をローテで描くのがベストみたいだぞ?」
「そっか。その芽美って、あの原田の妹のちびっ子だろ?」
「お前、ホントにオレだけの時だけ、雄弁だよな」
「うっさい。それにしても、よく漫画のコトを知ってるよなあ?」
「そりゃ、ただ絵が好きで、Fラン大通いながらイラスト描いてた程度のオレらと、漫研に入ってバリバリ同人出してるヤツとじゃ、知識も違うだろ」
そう言いながら、枠線引きを進める。
「枠線、上がったぞ?」「お、早いな?」「まあ、水性ペンで引くだけだからな」
芽美に教わった通り、枠線は太さの揃った水性ペンで行っていた。
「佐藤もキャラ、終わってんじゃん?」「キャラだけだからな」
佐藤は、自分のキャラを描くのは早かった。
「ベタがまだなんだが」「それはオレがやるよ」「こっち、キャラ描いたら」
「そうだな」「ここ、集中線頼むわ」「了解……っと」
そうこうしているウチに、昼になった。
「メシでも食いに行くか?」「別に、冷凍スパゲティで良くね?」「だな」
Fラン大時代に、散々した会話を久々にする。
「なあ……漫画、もう5ページが、完成しそうなんだが?」
「ああ。そうだな、佐藤」「ひょっとしてオレら……」
「皆まで言うな……オレたちが、女子高生よりもヒマなニートなどと!」
結局のところ、その日は5ページが完成し、翌日には4ページ、さらに翌日には、5ページが完成していた。
「佐藤よ。三日で14ページは、流石に神がかってるよな?」
「まあ、得意なキャラだし、お前も手伝ってくれてるし、ネームは出来てるし」
「ほぼサッカーの試合で、キャラも抜きやアップが、やたらと多いよな」
「お前の雑誌、少年誌なんだろ? 良くね?」
「とりあえず、コンビニでコピーしたのをスキャンして、文字入れてアップえみるか?」
「それも、自分でやるのか?」「当たり前だろ。オレが文字入れるから、お前は菓子でも食いながら、チェックしてくれ」「お、優しいじゃん」「金が入るかどうかも、解らんからな」「ま、そこはあんま、期待しとらんわ」
その日のウチに、佐藤のサッカー漫画、14ページはアップされた。
山口さんと大野さんに連絡を取り、SNSで情報が拡散されると、漫画はいきなりかなりの注目を集める。
「お、おい。なんか、とんでも無いコトになってないか?」
「なってるなあ、おい。特に、キャラ人気が凄いぞ?」
「美形やら可愛い系の男を、大量に出してるかなら……」
佐藤の漫画は、確実にバズっていた。