幸いにも、漫画家を一人確保できてしまった感じのボク。
あれから原田に聞いた話では、彼女自身は漫画を描けるものの、それまでサークルの製本をやってくれていた先輩が社会人となって抜けてしまい、どういたらいいか困っていたとの事だった。
「彼女が確実に漫画を描いてくれるとは限らないが、上がってきた時に乗せる雑誌が無いなんて、話にならんからな」
早速、ネット漫画雑誌本体の制作にとりかかった。
「HTMLやらCSSを覚えるのは、追々やるとして、まずはホームページでも作ってみるか? ネットを探せば、無料のホームページのテンプレートも落ちてるしな」
ボクはネットから目ぼしいテンプレートを見つけ、何個かダウンロードした。
「とはいえ、どうすんだコレ? 無料のホームページ制作ソフトもそれなりにあるが、無料だと作ったホームページに広告が入るのか?」
さすがにそれは、悩みどころだった。
「雑誌のロゴも決めないといけない。イラストも欲しいところだな。佐藤のヤツ、面接受かったのか?」
ボクは佐藤と連絡を取り、名古屋が発祥の喫茶店で待ち合わせる。
「お前、どこ受けたの?」「運送業、ってか倉庫作業ってヤツ? 見学に行ったケド、とてもじゃ無いがムリだな」「軟弱過ぎるだろ?」「うっせえ、お前に言われたくねえし」
佐藤の愚痴は、大体聞いてやった。
「で、お前の方はどうなん? 順調・・・なら、オレが呼び出されてないよな」
勝手に自己解決する佐藤。
「まあな。ホームページの制作の件なんだ。やっぱ無料ソフトじゃ厳しいっぽくてさ」「なんでも無料で済まそうとすんなよ」「無職な上に、タブレットとか買っちまって、金がない」「お前なあ・・・」
佐藤は、働けと言わんばかりの顔を、ボクに向けた。
「ホームページについては、専用のソフトを買った方がいいぞ」「あの15000円くらいするヤツ?」「するヤツ」「学割効かない?」「もはやFランク大学の学生ですらないんだぞ」「仕方ない、バイトするか」
ボクは直近の金を手にするために、アルバイトを決意する。
「ロゴやボタンのパーツはソフトを買えば入っているし、イラストなんかは自分で描けって話だ。ま、オレも1ページくらいなら、寄稿してやんよ」
バイトをキャンセルした佐藤は、上から目線で言った。
「これで二人目か」「え、誰か描いてくれんの?」「あ、言ってなかったか? 原田の妹だよ」「アイツ、妹いたのかよ。で、可愛かった?」
ボクは、遠くの雲を眺めた。