この場は、引き下がるしかないと思った。
けれどもボクには、子供のころから少しだけ評価されている部分があった。
それは好奇心だ。
両親や歴代の担任など、そこだけはボクを評価してくれていた。
「と、ところで佐藤。具体的に何がダメだったんだ?」
無関心の中に紛れ込ませながら聞いてみた。
「何もかも・・・かな?」
「え、何もかも?」
「だってよ。絵は描けないし、ストーリーもグダグダ。それに下手な絵だって、1ページに何コマも埋めないといけないんだぜ」
予想以上に厳しい答えが返ってきた。
「でもお前、イラストならオレくらい描けるじゃんか?」
「まあ、一枚絵ならな。それを何コマも描くってなると、グダってくる。クオリティーが落ちてくるんだ」
「そ、そんなもんか?」「そんなもんだ」
佐藤はコーラをすすりながら言った。
「それに背景、ありゃメンドいわ。最近の漫画の背景なんて、製図並みじゃん? あんなの描いてらんねーぜ」
「た、確かに」
すると、それまで傍観を決め込んでいた、原田も口を開いた。
「漫画を描くのって、やっぱハードル高いのな。そこまで苦労すんなら、変なネット雑誌に載せるより、漫画の賞とかに応募するわな」
「っま、いきなり賞が取れるのは、一部の天才だろうしな。落ちたら、ネットに乗せるのもありだとは思うが」
佐藤は意外にも反論した。
「確かに賞を通さずに、ネット漫画からプロになったヤツもいる。なら、オレが作ったネット漫画雑誌でも、可能性はあるよな?」
「え? ないだろ?」「いや、ある」「ねぇって」
二人のネガティブな意見を聞いても、ボクの心はポジティブで満たされていた。
次の日、ボクは漫画の画材ショップでGペンと、製図用インクと、漫画用原稿用紙を購入した。
それからパソコンショップへとハシゴし、安価なペンタブレットも買ってみた。
「とりあえずまあ、自分でもやってみないとな? 漫画の制作時間や、どこで挫折するのかも、調べないと」
ボクの手には、Gペンが握られていた。