しばらくボクは、アルバイトをしながらネット漫画雑誌の制作に励もうと思った。
ハンバーガーチェーンでバイトでもしようかと考えたが、飲食業は厳しいとネットのうわさになっていたので躊躇していると・・・
「ならお前、ネットで仕事見つけたら?」
・・・と、佐藤に言われて、『クラウドソーシング』なるものを始めてみた。
クラウドソーシングとは、ネット上でライターやイラストレーター、WEBデザイナーなどの職業と、企業などのクライアントをマッチングさせるサービスだ。
最初は技術も無いボクにできるのかと不安だったが、とりあえずイラストから始めてみた。
「はい。はい。了解です。直しは明日までに・・・」
結局、描いたイラストすべてを直すハメになる事すらあった。
直しなど断ったりする人もいるらしいが、自分のイラストのスキルアップの為にあえて引き受けた。
翌月にはある程度の金も貰えて、ボクは15000円もするソフトを買った。
今度はホームページの制作依頼をこなしながら、技術を磨く。
最初はコンベンション型の案件に、あえて応募した。
ボクの作ったホームページはまだまだ技術不足で、採用はして貰えなかったが、ホームページを作った時間が無駄だったかといえば、そうでもなかった。
「うん。多少はホームページ制作の、なんたるかを解れた気がする」
合間を縫って、自分のホームページも立ち上げる。
漫画も載っていないので、検索エンジンへの登録はまだだ。
仕事に忙殺されて、しばらく連絡を取ってなかった、原田に連絡を取る。
「あー、アレ。忘れてた」
スマホのむこうで、妹の声がした。
ボクは原田の家に向かおうと提案すると、妹から一週間後を指定される。
一週間後、指定された世界最大のカレーチェーン店に入ると、原田の妹と、彼女と同じ制服を着た女性が他に三人、座って待っていた。
「あ、あの・・・これは?」「ン? サークルのメンバー」「原田は?」「お腹が痛くなったから、こ来れないって」「小学生か!」
原田の妹を含む四人の女子高生は、みなカレーをパクついていた。
カレーの料金も気になるボク。
「原稿・・・ラフだけど・・・ン」
原田の妹から渡された漫画原稿は、シャープペンで走り書きされたモノだった。
「ああ、ありがとう。でも、これは・・・?」
「ネーム描くのメンドウだったから、原稿にじか描きした。読んで」
ネームとは、漫画の下書きというか、設計図みたいなモノで、普通はネームの段階でストーリーやコマ割りの直しをするのだ。
「な、なる程・・・わかったよ」
ボクは立ったまま、漫画を読もうとしたが、座るように催促された。
「で、では失礼します」
四人は沈黙したままだった。
「ネ、ネームの段階で漫画を読むの、初めてだケド・・・どれどれ?」
そこには、殴り描きされた絵と、汚い文字が並んでいた。