企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)132話

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スパルタ教育

「ホラ、言わんこっちゃ無いっス! こんなの完全にライバルを、育てているようなモンじゃないっスか!?」

 

「まあ、業務提携先でもあるんだし、そうとも言い切れんだろ?」

「会社の規模にしたって、ウチとは全然違うんじゃ無いっすか?」

 

「そりゃそうなんだケド……でも、サッカークラブが漫画部門を作ってくれれば、漫画を描ける人間が、夢を叶える可能性が高まるのも事実だろ?」

「は~、アタシの彼氏は、どうしてこうもお人好しっスか!?」

 

「なる程……そう言うコトでしたか?」

晃さんが、一人で納得していた。

 

「なにが、なる程っスか?」

「いえ……あなたのネット漫画雑誌に、優秀な漫画家が集まった理由が、何となくわかった気がします」

 

「ボクのネット漫画雑誌に……人が集まった理由? 偶然じゃなくて?」

「鷹詞も鈍いっスね!」

 

「わたしも、漫画については素人です。これからも、色々と学ばせて下さい」

「はあ? 漫画を舐めてるっスか? 今日中にでも、基本くらいは叩き込まないと、ロクな漫画家しか集まらないっスよ?」

 

「オ、オイ、芽美!?」

「協力してやろうって言ってるんスよ……どんな基準で漫画家を選考するかも解らない、どうやって契約した漫画家と付き合うのかも、解ってないっスよね?」

 

「ハ、ハイ……確かに、その通りです」

晃さんは、年下の芽美相手でも、丁寧な口調となっていた。

 

「大手の漫画出版社ほど、ノウハウは無いですケド、ウチで良かったら色々と教えますよ」

「ちょっとー、鷹詞は、甘々っス!?」

 

「まあそんなに目くじらを立てなくても……芽美、色々教えてやってくれ」

「まったく……仕方ないから、教えるは教えるっスけど、スパルタっスよ!」

 

「ハイ、覚悟はできてます!」

晃さんは、体育会系のノリで答えた。

 

「それじゃあまず、基本中の基本……面白い漫画とは、何かからっス!」

「それが判れば、誰も苦労は……」

「そこ、口出ししないっス! 教えるのは、アタシなんスよ」

 

芽美は、熱く漫画についての知識を、晃さんに語る。

 

「スマンが、オレたちはそろそろ帰るわ。もう時間も時間だしな」

佐藤が言った。

 

「オー、ではお二人は、わたしの車で帰るね。晃さん、だいじょうぶね?」

「はい、わたしはまだ残って、漫画の知識を身につけねばなりませんから」

晃さんは、真面目で熱心だった。

 

「グンナーさん。今日は、本当にお世話になりました」

「水臭いコト、言わないね。それじゃね」

 

佐藤と池田さんを乗せた車は、夕闇の空の下を、赤いテールランプを靡かせながら走り去る。

 

ボクのアパートには、二人の女性が残された。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)131話

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決心

「まったく、鷹詞はお人好しっスねえ」

 

「別に、そうでも無いと思うが……漫画家が活躍する場所を広げるのは、ボクの目標でもあったんだ」

 

「そうだったんスか?」

「まあな。最低限、儲からなくても、そこくらいはクリアしたいと思ってた。それが、それなりに儲かっているだけなんだよ」

 

「事業として成功してると思ってましたが、意外に目標は低かったんですね?」

晃さんが言った。

 

「ボクの場合、漫画家に恵まれたってだけだよ。都合よく、芽美や佐藤、市川さんら優秀な漫画家が集まった結果さ」

 

「まあ漫画の場合でも、意気込んで描いた漫画がコケて、次の連載までの繋ぎくらいのつもりで描いた漫画が受ける場合もあるっスからね」

 

「そう……まさにそんな感じでさ。元々ニートだったボクが、アルバイトもきついからって始めたのが、今のネット漫画雑誌の最初だったんだ」

 

「それからウチの兄貴から、あたしが紹介されたってワケっスね?」

「実は自分で漫画を描こうと、Gペンを握ったり、タブレットをいじったりしてたんだケド、ボクには向いて無かったみたいだ」

 

「それで、雑誌を作る編集側に回ったんですね?」

「ああ。ボクにはバックアップが、向いてるみたいだからね」

 

「わたし、決心しました!」

晃さんが言った。

 

「決心って……何をっスか!?」

芽美が、ボクも抱いた疑問を聞いてくれた。

 

「今、ウチのデザイン事務所って、漫画家と仕事をする感じじゃないですか?」

「でも、本当にそうしたいと思ってるのは、サッカークラブのオーナーである大倉野さんであって、成瀬さんは仕事上……」

 

「いえ、むしろ本気で思っていたとしても、実現できるかは別問題です。実際、ウチのデザイン事務所の方がまだ、漫画家と仕事をした経験もあって、ノウハウもあると思うんです」

 

「た、確かにそうだケド……大倉野さん的には、サッカークラブのファンやサポーターの中から、漫画家を発掘したいと思ってる」

すると、佐藤が口をはさんできた。

 

「大倉野さんのサッカークラブは、日本のトップリーグに所属し、歴史もあってサポーターもかなりいます。クラブを愛するサポーターの中には、漫画を描ける人材もいるんじゃないかと?」

 

「でしょうね」

晃さんは、あっさりと認める。

 

「ですが、サッカークラブが漫画家の管理までは、しないと思うんです。ですからオーナーは、ウチのデザイン事務所を紹介されたと思ってるんですよ」

 

「それじゃあ、晃さんが決心したってのは!?」

 

「漫画の編集……つまり、あなたと同じコトがやりたくなりました」

晃さんは、平然とした顔で答えた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)130話

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学校のような存在

「あ……あの、晃さん。ウチはこ通り、ボロアパートなんで、そんなに見るべき

ところも……」

 

すると晃さんは、ボクの机の上にあった原稿用紙を眺めていた。

 

「この絵……もの凄く上手いですよね? でも、こんな絵柄の漫画、ネット漫画雑誌には載ってませんでした」

 

「ああ、それは兼ちー……じゃなくて、森兼 明人の漫画です。まだ、表紙絵だけですケド」

 

「森兼さん……新しい漫画家さんですか?」

「ええ、その予定なんですケド、著しく気まぐれなヤツでして……」

 

「著しくなんて、生易しいっス。性格は、ひねくれまくってて、ゴミっス!」

かつて兼ちーと、差別についてもめた芽美が、息巻く。

 

「そう言えば、お前はなんでウチに来てんだ?」

「とーぜん、新連載の一話目が完成したんスよ」

 

「そっか、どれどれ?」

芽美から、いきなり十数ページの原稿用紙を渡された。

 

「うん、まずは物語の導入部分か? 前のサッカー漫画より、キャラが厚いっていうか、深みがある感じがするな」

 

「そうっスか? キャラが漫画やアニメっぽいとか、前の連載じゃ散々言われたんで、何とか直してみたんスよ」

 

「あの……わたしにも原稿、見せてもらってもいいでしょうか?」

晃さんが、背中から覗き込んできた。

 

「いいですケド……いいよな、芽美?」

「まあ、別に構わないっス……」

構わないと言いつつ、不満気な芽美。

 

「……この漫画って、主人公がネット漫画雑誌を立ち上げようとしている、お話なんですね。面白いし、参考になります」

 

「ま、まあ少しは見る目があるみたいっスね。ところで鷹詞。この女のデザイン事務所とは、どんな契約を結んだんスか?」

 

「この女じゃなくて、晃さんな。実は……」

ボクは、サッカークラブからデザイン事務所に至るまでの経緯を、芽美に話した。

 

「ど、どーしてそうなるんスか? まず、サッカークラブにウチの佐藤先生の漫画を、無償で貸し出す意味が解らないっス! それにサッカークラブが、漫画連載を始めようとしてるんスよね?」

 

「ああ……そうだよ」

「それって、完全にライバルじゃないっスか?」

 

「でも、面白そうじゃないか? サッカークラブが、漫画部門を持つんだぜ」

「そんなに簡単に行くとは思えないっスケド、上手く行ったらウチの漫画家を抜かれちゃうっスよ?」

 

「でもさ。漫画家が必要とされる場所は、増えるワケだろ?」

「そりゃそうっスケド……鷹詞は、それでいいんスか?」

 

「そうだな……」

ボクは、かつて心に誓った決意を、初めて打ち明ける。

 

「ボクのネット漫画雑誌は、学校みたいな感じで良いと思ってる」

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)129話

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ムキーーーッ!!?

「ウチのデザイン事務所も、最初はデザインやってて凄いなあって思ってました。でも実際に受けるのは、無難なデザインのアレンジが殆どだったりして……」

晃さんは言った。

 

「晃さんは、元々デザインに関心があったんですか?」

ボクは、なにげに聞いてみた。

 

「はい、美大を出てますから。あ、でもパソコンはちょっと苦手なんです」

晃さんは、才能で絵を描くタイプと感じた。

 

「ボクは、パソコンの方が得意かな。やってるコトと言えば、漫画の文字入れや背景のハメ込み……ネット漫画雑誌の表紙を、毎回作るコトくらいですケドね」

 

「へー、それじゃあ、お邪魔しますね」

見学する気、満々の晃さんはアパートの部屋の扉を開けた。

 

「おわッ!? やっぱ見学していくんですか!?」

ボクは、慌てて後を追う。

 

「アレ……誰か寝てますよ? 妹さんですか?」

「いえ、ボクに妹はいません……って、やっぱ芽美か!」

 

キレイとは言い難い畳に寝っ転がっていたのは、原田 芽美だった。

 

「そう言えば、合いカギ渡してたんだっけ。ホラ、こんなところで寝てると風邪ひくぞ」

「あや? 鷹詞がいる……ここはどこっスか?」

 

「なんか、小っちゃくて可愛らしいコですね?」

するとボクの肩越しから、晃さんも芽美を覗き込んだ。

 

「……んなッ!?」

慌てて飛び起きる芽美。

 

「鷹詞、その女は誰っすかぁッ!!?」

ボクと晃さんの間に、割って入る芽美。

 

「ああ。話すと長くなるんだケド、デザイン事務所の晃さんだよ」

「どうしてデザイン事務所の女が、ウチに居るんスか!?」

 

「ここはお前の家じゃなくて、オレのアパートな。実は、成瀬さんって社長と話す機会があって、業務提携を結んだんだ。それで、晃さんがウチに見学を……」

 

「見学ゥ!? この汚らしいアパートなんか見学して、ど~するっスか!?」

「それに関しては、オレも同意なんだが……まあとりあえず、見てもらうコトになったんだよ」

 

「フ~ン、随分と大人な感じの女っスね」

「お前が、チビッ子なだけだろ?」

「チビッ子言うなっス!? 大体、鷹詞は女と馴れ馴れしく……」

 

「あの~このコは?」後ろから問いかける、晃さん。

「あ、ボクの彼女なんです」

 

「え、そうなんですか? 見たとこ、小学生か中学生くらいに見えるんですケド」

「ムキーーーッ!!? こ、この女ッス……!?」

 

「あ、こう見えて原田先パイ、わたしの先パイだったりします」

池田さんも、咄嗟にフォローする。

 

「そうなの? あなたも子供っぽいと思ってたけど、そんなモノじゃないわね?」

さりげなく、二人の逆鱗に触れる晃さん。

 

「ムキーーーッ!!? わたしのどこが子供っぽいって言うんですか!」

「ムキーーーッ!!? その池田なんて目じゃないって言ったっスね!?」 

 

彼女は意識すること無く、人を怒らせる性格の様だった。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)128話

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見栄と見栄

「オー、そいえば、わたしもネット漫画雑誌の編集部、見てみたいねー」

グンナーさんが言った。

 

「いや……ウチは、その……」

だが、そんな大そうなモノは無い。

 

「まーいいじゃないか。こうやって、業務提携を結んだ仲だろ?」

「は、はあ……」

成瀬さんの前で、断る技量はボクには無かった。

 

「行って来い、晃ちゃん!」

「はい、社長。しっかり、見学させて貰って来ます!」

晃さんは、すっかりその気になっている。

 

「編集部っても、市内だろ? 晃ちゃん、終わったらそのまま帰っていいから」

それは、タイムカードは定時で押して置くという意味らしかった。

「了解です、社長」

 

ボクたちはデザイン事務所を出ると、グンナーさんの車へと乗りこむ。

 

「わたしが真ん中です。晃さんは、わたしの隣に座ってください」

後部座席では、それほど必要とは思えない、池田さんの佐藤先生・隔離作戦が行われていた。

 

「場所解らないね。どこ道行けばいい?」

グンナーさんが、助手席のボクに質問する。

 

「えっと、大体この辺りの……」「りょーかいね」

何もいい案が、思いつかないボクは、ボロアパートの場所を教える。

 

「前に夜吸さんが言ってた……そろそろ借金をして、仕事場を借りた方がいいのだろうか?」

 

営業というモノには多少は慣れた気もするが、経営というモノには、まだ全然慣れていなかった。

 

「わたし、実はネット漫画雑誌、けっこう前から知ってるんです。佐藤先生のサッカー漫画と、ヴァンパイア探偵は読んでますし」

晃さんは言った。

 

「晃さんって、けっこーイケメン好きなんですね?」

何故か晃さんに立てつく、池田さん。

 

「あなたも、そうなんじゃなくて?」

「わたしは、漫画家を目指してますから。キャラ研究のために佐藤先生のアシスタントをさせてもらってるんです」

 

「カワイイ娘だわね」「それはどうも」

バックミラーを覗くと、笑顔の二人の女性に押された佐藤が、隅っこの方で気まずそうに丸まっていた。

 

「なんか古いアパートに付いたね。こっから、どう行けばいい?」

グンナーさんが質問する。

 

「ここが……ボクのアパートです。残念ですが、編集部なんてありません」

少しくらい見栄を張ってみたかったが、無理だった。

 

「え……それじゃあ、ここであのネット漫画雑誌が生まれてるの!?」

晃さんが、窓を開け身を乗り出す。

 

「そ、そうなりますね……アハハ」

開き直るしかないボク。

 

「オー、漫画編集部、デスクいぱいあって、編集さんいぱい働いてるイメージだたね」

 

「それは、大手のリアル雑誌を出してる出版社ですよ。ウチは、ホームページをネット漫画雑誌に見せてるだけだから、パソコン一台あればできちゃうんです」

 

「でも……それって凄いですよね」

晃さんは、意外にも幻滅はしていなかった。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)127話

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名詞

「で、ですが、当社は予算も限られて……」

ボクは、慌てて止めようとする。

 

「お前な。こう言う場合は、無料なの。正直に言えば、お前んとこが有名になった方がウチが儲かる。あと、お前……名詞は持ってるか?」

 

「は、はい!? 持ってます!」

ボクは、名刺を出すのが遅れたと思って、慌てて名詞を差し出す。

 

「なんだ、プリンタ印刷じゃねえかよ。よし、お前の名詞も、ついでにつくってやる」

成瀬さんは席を立つと、近くの席の女性社員に指示を出した。

 

「そうだな……デザインは、あえてモノクロでいくか」

「は、はい、社長。了解です。ちょっと待っててくださいね」

 

「漫画雑誌であることを、それっぽく入れて、あとは名前とメアドと電話番号を……」

「はい、はい……こんな感じですか?」

 

「どうやら女の社員さん、まだ新人さんみたいですね」

池田さんが言った。

 

「でも、いいよな。オレも名詞とか欲しいぜ」

「ん? お前も営業やるのか?」「や、やっぱ要らん!」

佐藤は直ぐに、要求を引っ込める。

 

「じゃあこのデータを、下の階の輪転機に回しちゃって」

女性社員の後方に回り込んだ成瀬さんが、指示をしている。

 

「ウチの社長さん、若い女性にはやたらと優しくてねえ。新人でも男だと、厳しく当たり散らすんだよね。おばちゃんにもさ。アハハ……」

 すると、コーヒーを持って来てくれたおばちゃんが現われて、空のカップを片付けて行った。

 

「名刺は、帰りまでに上がるぜ。ところでよ。こっちも漫画に関するノウハウは、ほぼゼロなんだわ。そこんトコ、期待しちゃっていいか?」

やはり商売人というのは、交渉術を用意しているものだ。

 

「はい、ただ漫画の場合、ノウハウが概念的だったり、感覚的だったりしますから、一度情報をまとめた物をお渡しします。あと、漫画に慣れ親しんだ世代の方を、用意していただけると……」

 

「なる程な。これでもオレは社長だから、そんなにヒマでも無いワケだ。ちょ、ちょっと待っててくれ……」

そう言うと成瀬さんは、社内の狭い通路の中を歩き始めた。

 

「やっぱ、晃(あきら)ちゃんかなあ? 他のヤツは、忙しすぎて無理そうだしな」

成瀬さんが止まったデスクは、先ほどの女性社員のところだった。

 

「わ、わたしが晃と申します。以後、お見知りおきを」

そそくさと、ボクに名刺を差し出す晃さん。

 

「お前の名刺、出来たってよ。ホレ、晃ちゃんも一枚」

出来上がったボクの名刺を、勝手に一枚差し出す成瀬さん。

無料なので、文句も言えない。

 

「あ、どうもです、社長」

ボクの名詞を受け取って、社長にお礼を言う晃さん。

 

「とりあえず晃ちゃん、先方の会社の見学をさせて貰ったら?」

成瀬さんが言った。

 

(け、見学って……う、ウチのアパートをかッ!!?)

ボクは、全力で焦った。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)126話

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説明マンガの先

「あ……あの、成瀬さん?」

漫画を読み終わって、冷静になっていた成瀬さんに声をかける。

 

「イヤ……まあ、オレも漫画は良く読むんでな」

タブレットをテーブルに置き、コーヒーを飲む成瀬さん。

 

「お、お前ら、コーヒー飲むか? の、飲むよな? ま、待ってろ」

成瀬さんに指示された、おばちゃんのお盆に乗せられて、自販機のコーヒーが運ばれて来た。

 

「まあ飲め飲め。確かにお前んトコのは漫画メインで、ホームページってより漫画雑誌に近い感じだな。ウチも大倉野のトコのホームページ作ってるから、ライバルになると思ったが……」

 

成瀬さんは、漫画を読んでいるより遥かに短い時間、考えた。

「ウシッ、お前んトコとは、良好な関係が築けそうだ。今の時代、デザイン事務所なんて横並びで個性を付けづらいが、これならいけるかも知れん」

 

「そ、そう言っていただけると、有難いです」

とりあえず、胸を撫でおろすボク。

 

「オレんとこも、説明マンガなら過去に何度かやったコトがあるんだわ。別に、失敗ってワケじゃなく、手ごたえもあったんだが、後が続かないのよ」 

成瀬さんが言った。

 

ボクは、どうして説明マンガではダメなのかを説明しようとしたが、踏みとどまった。

 

「実はよ。オレも、何件か説明マンガを受けるウチに、気付いたコトがあんだわ。それが、最初の頃に受けた説明マンガに比べて、今の説明マンガは商品やサービスに関係ないストーリー部分が、ガンガン増えてんだ」

 

「え? そうなんですか?」

「ああ、例えば『漫画で説明する○○……』みたいな本、あるじゃん。アレなんか典型で、最近だとマジで破天荒なストーリーが入ってたりすんだよね」

 

「あ、その本、わたしも読みました。面白いストーリーを読んでるウチに、色々学べちゃうんですよね」

池田さんが言った。

 

「そう、キミも解ってるねえ。そうなんだよ、だったら企業漫画を連載するのも有りなんじゃないかって、頭のどこかで思ってたんだ。……ウ、ウソじゃないぞ?」

誰もウソだなんて言ってないのに、成瀬さんは念を押す。

 

「確かに、これ行けるのかもなあ。大倉野んトコも、サッカークラブのクセに漫画を連載するつもりでいるみたいだしな?」

横柄な脚を組みなおす、成瀬さん。

 

「このまま、他のデザイン事務所と差別化も出来ず、値下げ競争に巻き込まれるよりは、漫画家を大勢抱えてるお前んとこと、業務提携を結んだ方が良さそうだな。よし、まずウチが、お前んとこのネット漫画雑誌の宣伝をしてやるよ」

 

成瀬さんの眼が、ギラギラと輝き始める。