企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)127話

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名詞

「で、ですが、当社は予算も限られて……」

ボクは、慌てて止めようとする。

 

「お前な。こう言う場合は、無料なの。正直に言えば、お前んとこが有名になった方がウチが儲かる。あと、お前……名詞は持ってるか?」

 

「は、はい!? 持ってます!」

ボクは、名刺を出すのが遅れたと思って、慌てて名詞を差し出す。

 

「なんだ、プリンタ印刷じゃねえかよ。よし、お前の名詞も、ついでにつくってやる」

成瀬さんは席を立つと、近くの席の女性社員に指示を出した。

 

「そうだな……デザインは、あえてモノクロでいくか」

「は、はい、社長。了解です。ちょっと待っててくださいね」

 

「漫画雑誌であることを、それっぽく入れて、あとは名前とメアドと電話番号を……」

「はい、はい……こんな感じですか?」

 

「どうやら女の社員さん、まだ新人さんみたいですね」

池田さんが言った。

 

「でも、いいよな。オレも名詞とか欲しいぜ」

「ん? お前も営業やるのか?」「や、やっぱ要らん!」

佐藤は直ぐに、要求を引っ込める。

 

「じゃあこのデータを、下の階の輪転機に回しちゃって」

女性社員の後方に回り込んだ成瀬さんが、指示をしている。

 

「ウチの社長さん、若い女性にはやたらと優しくてねえ。新人でも男だと、厳しく当たり散らすんだよね。おばちゃんにもさ。アハハ……」

 すると、コーヒーを持って来てくれたおばちゃんが現われて、空のカップを片付けて行った。

 

「名刺は、帰りまでに上がるぜ。ところでよ。こっちも漫画に関するノウハウは、ほぼゼロなんだわ。そこんトコ、期待しちゃっていいか?」

やはり商売人というのは、交渉術を用意しているものだ。

 

「はい、ただ漫画の場合、ノウハウが概念的だったり、感覚的だったりしますから、一度情報をまとめた物をお渡しします。あと、漫画に慣れ親しんだ世代の方を、用意していただけると……」

 

「なる程な。これでもオレは社長だから、そんなにヒマでも無いワケだ。ちょ、ちょっと待っててくれ……」

そう言うと成瀬さんは、社内の狭い通路の中を歩き始めた。

 

「やっぱ、晃(あきら)ちゃんかなあ? 他のヤツは、忙しすぎて無理そうだしな」

成瀬さんが止まったデスクは、先ほどの女性社員のところだった。

 

「わ、わたしが晃と申します。以後、お見知りおきを」

そそくさと、ボクに名刺を差し出す晃さん。

 

「お前の名刺、出来たってよ。ホレ、晃ちゃんも一枚」

出来上がったボクの名刺を、勝手に一枚差し出す成瀬さん。

無料なので、文句も言えない。

 

「あ、どうもです、社長」

ボクの名詞を受け取って、社長にお礼を言う晃さん。

 

「とりあえず晃ちゃん、先方の会社の見学をさせて貰ったら?」

成瀬さんが言った。

 

(け、見学って……う、ウチのアパートをかッ!!?)

ボクは、全力で焦った。