始めてネット漫画雑誌をネットにアップし、その雑誌に始めて漫画が載った。
最初は来訪者もゼロであり、アクセス解析のグラフも地べたを這いつくばっている・・・と予想していた。
しかしそこは、女子高生が四人も関わったプロジェクトであり、SNSを使って拡散された情報により、雑誌はいきなり人気を得てしまったのだ。
「お、恐るべし、女子高生の拡散力。オレだけだったら、絶対にこうは行かんぞ」
ネット漫画雑誌には、他のSNSサービスを使って掲示板をつけていたが、早くも次回の要望が来ていた。
「また、原田妹に続きを描いてもらうか。原稿料についても、話しあわないとな」
ネット漫画雑誌の運営は、今のところそこまで厳しくは無く、ニート上がりのボクはフリーランスの案件を何回か受注して、多少の金銭を得ていた。
すると原田妹から、スマホに連絡が入った。
「なんだ? オレに会わしたいヤツがいる?」
ボクは待ち合わせ場所の、コーヒーチェーン店に向かった。
「キャラメルマキアート一つ、トールサイズでお願いっス」
遠慮なく人の財布で注文する、原田妹」
「あれ? 今日は萩原さんたち、来てないんだ?」
六人掛けのテーブルに、ボクと原田妹だけが座った。
「なんで萩原さん筆頭っスか」「ほかの二人、名前なんだっけ?」
「山口と大野っスよ。失礼な社会人っスね」「アハハ・・・」
自分を社会人などと思っていないボクは、コーヒーを口に運んで誤魔化した。
「今回会って欲しいのは、わたしの中学時代の同級生と、そのトモダチっス」
「っていうと、とうぜん女子高生になるワケだよね」
「クッ、とーぜんそうなるっスよ。言い方がムカつくっスけど」
すると金髪の美少女と、栗色の髪の美少女が、原田妹の隣に座った。
「ま、まさかキミたちが、原田さんの・・・友達?」
「まさかとは、何っスか? まさかとはっス」
「だってこんな美人が・・・なに、このハーレム展開?」
「いや、別に二人とも、お兄さんに興味は無いっスよ。お兄さんの作った、ネット漫画雑誌に興味があるだけっス」
原田妹は、報酬として差し上げた、中古のノートパソコンを取り出す。画面には、ボクが頑張って作った、ネット漫画雑誌のトップページが映っていた。
「SNSで拡散したら、二人とも漫画を読んで、興味を持ってくれたっス。ちなみに二人とも、漫画を描いてるっスよ」
現役時代に女子高生とは、殆ど縁のなかったボクは何とか、原田妹の横に並んでいる二人の現役女子高生を見た。
「二人とも・・・名前は?」「なにボソボソ言ってるっスか?」「いや、現役の女子高生だと思うと、緊張しちゃって」「わたしだって、現役の女子高生っスよ!」
原田妹は、リスの様に頬っぺたを膨らませる。
「わ、わたしは、原田の友達で、市川って言います」
茶髪の女子高生は、アワアワしながら名乗った。
「今じゃこんなっスけど、市川って中学時代は、わたしと大して変わらない地味な感じだったっスからねえ」
原田妹にも、自覚はある様だと思った。
「い、今だって変わってないよ。漫画だって好きなままだし。でもウチの高校、漫研も無ければサークルも無くて」
市川さんは、見た目に反して良い子な気がした。
「それで、このコがイリヤ。今、フランスからウチの学校に、留学に来てるんです」
金髪の女子高生は、ニコリと笑った。