・・・とは言え、ネーム段階の漫画が、いきなり完成するハズもない。
単純で地味な、制作過程が始まった。
市川さんが、ネームを元に原稿に下書きをする。
イリヤさんが、水性マーカーで枠線を引く。
ボクはその間に、漫画雑誌のSEO対策に入った。
「SEOってなんスか? 剣とファンタジーのネトゲ世界に閉じ込められた・・・」
自分のサッカー漫画の、次回の話を描いてた原田妹が、ボクに質問した。
「違うよ。SEO対策は、大手の検索エンジンに引っ掛かりやすくする為の対策だよ。ネット漫画雑誌って言っても、その実ただのホームページだからね。検索順位を上げておかないと」
とは言っても、女子高生たちのSNSでの拡散力はすさまじく、すでにある程度の上位には入っていた。
「ヘタにいじって、返って順位が落ちたりしないっスか?」
「そ、そういわれると、心配になってきた。でも市販のホームページ制作ソフトで、ボクができる範囲だからね」
なにしろ、何人もの女子高生たちが(たまたまだが)、思いを込めた漫画作品を寄稿すてくれちるのだ。
SEO対策もいい加減でいい、ハズがなかった。
「これでも、クラウドソーシングで、ホームページ案件をこなしたからね」「結局コンベンションに負けて、採用されなかったヤツっスか?」「う、うるさい」
原田妹は、ボクに対しては一言多かった。
「あと、ファンとの交流の場である、掲示板もつけようか?」「荒らされちゃわないっスか? SNSで十分な気がするっス」「そ、そうか?」
その案は直ぐに、却下となる。
「そんなに焦る必要は無いっスよ、まだ漫画、5ページだけっスから」
「ちなみに市川さんのは、何ページになりそうかな?」
「えっと、11ページですね」「そ、そうか」
かなり頑張って、ネームを描いたように見えて、11ページなのだ。
「プロの漫画家って、やっぱ凄いんだな」「そうっスねェ」
原田妹の返事には、ため息が混じっていた。
「一人のプロジェクトじゃないんだ。みんなで一歩ずつ前に進むしかない」
「オニーサン。いーことゆーねー」
「でも、ホントそーだよ」「やってやるっス」
漫画の制作作業は、夜まで続けられた。
それでも11ページの漫画は強敵で、その日のウチに終わることは無かった。