企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)025話

一ヵ月が経過した。

 

市川さんの11ページの漫画も、何とか完成し、ボクの漫画雑誌を通じてネットに公開された。

「ハワイのマウナケア山に降り立ったサムライが、ヒロインの女の子を雪崩から救って、恋心が芽生える話か」

 

内容も絵も、ボクが文字入れの作業をした段階で解っていた。

けれども、スマホで漫画として読むそれは、違った感覚で見れた。

 

「市川さんの漫画、おかしな設定だケド、反応は良好みたいだね」

ボクは、漫画を描きにアパートに来ていた、原田妹に言った。

「そ、それがっスね、お兄さん。言いにくいんスけど・・・」

「ん? どうしたの?」

 

「いや、それが市川がっスね。今回のテストで成績が下がったみたいで」

「ええ、そうなんだ!」

ボクは、そうなる事を予測はしていた。

 

けれども、漫画雑誌が少しずつ注目を集めて行く成功体験にうかれ、対処をおろそかにしてしまっていた。

「わたしは元々、落ちるトコまで落ちてるからいいんっスけど、市川は美大に進みたがってたっスから」

 

原田妹にしても、成績が悪いままで良いとも思えなかった。

「そういえば、イリヤさんは?」

「フランスに帰ったっスよ。元々、一ヵ月きりの交換留学だったっス」

 

「萩原さんたちも、最近は来なくなったね」

「萩原たちは最初から、趣味みたいな感じで参加してたっス。漫画に飽きたのかも知れないっス」

そう言うと原田妹も、早めに作業を切り上げて、帰って行った。

 

「そっか・・・みんなそれぞれ、都合があるよな」

それは、当たり前のコトだった。

 

「最近はオレも、フリーランスの仕事、全然こねーし、ニートに逆戻りか?」

ボクは、日焼けした畳に寝そべる。

アパートの、雨漏りの跡だらけの天井を、久しぶりに見た気がした。

 

「コーヒーでも、煎れるか」ボクは、苦いコーヒーが飲みたくなる。

「あれ、コーヒーが切れてやがる。しゃーない、コンビニ行くか」

空っぽの瓶を、資源ごみの袋に分別すると、アパートを出た。

 

「なんなんだ、この喪失感は。たまたま上手く行っていた雑誌が、ダメになっただけじゃないか?」

ボクは、コンビニまでのわずかな道を、歩きながらつぶやく。

「あの、わがままな女子高生たちに、ポテチやら焼き鳥を、買いに行かされていたときの方が、今よりは気分もマシだったのに」

 

思い悩む間もなく、コンビニにたどり着いた。

レジで、コーヒーだけ買って外に出る。

「まだ原田妹がいる。でも、一人だけで続けさせるか?」

コンビニの100円コーヒーを、グビっと飲み込む。

 

「漫画の作業は、ハンパなく大変なんだ。萩原さんたちが来なくなった今、漫画を生み出すペースは、相当落ちるハズだ」

ボクは、重大な決断を迫られる。

 

「女子高生なんて、人生で一番大切な時代じゃないか。無理に、ニート上がりのボクのわがままに付き合わせるなんて・・・できないよな?」

 

紅い夕日は、ビルの隙間へと消えて行った。