一晩悩んだボクは、ネット漫画雑誌の更新をしばらく休止すると決めた。
決定を原田妹に伝えようと、スマホを取りだす。
「そうだなあ。やっぱ、直接伝えないと、ダメか?」
ボクは、久しぶりに原田の家へと向かった。
「今となっては、原田よりも妹のが、会う機会が多いんだよな」
「よう、久しぶりじゃね?」
急に道端で声をかけられた。
「さ、佐藤か? 久しぶり」
Fラン大を卒業し、就職が決まっていないグループの、佐藤だった。
「相変わらず、就職はまだなのか?」
「お、オレ、動画で生きて行こうと思ってるんだ」
「・・・まだなんだな」
ボクは佐藤を、コンビニに誘った。
「コーヒーふたつ」「お前、100円コーヒーで、恩を着せようってんじゃないだろうな?」「そのつもりだが」「自分で払うわ」
佐藤は、怒りながらフードコートに座った。
「お前はどうなんだよ? ネット漫画雑誌なんて、上手く行くわけ・・・ん?」
ボクはスマホで、ネット漫画雑誌を見せた。
「なあッ、これ、お前が作ったのか?」「まあな」
驚きを顔じゅうに表す佐藤をしり目に、コーヒーを飲んだ。
「表紙と、サイトデザインはオレが作った。表紙絵は、その都度差し替えだ。今回は市川さんのサムライスノボ漫画が表紙だな」
「お前、いつから有能になったんだ・・・って、市川さんって、誰だよ」
「佐藤妹の、中学時代の同級生だよ」「って、女子高生か?」
佐藤にとって重要なポイントは、常にそこだった。
「茶髪だけど、素直でいい子だよ」
「それじゃあ、お前。少し残念な原田妹に、市川さんまで、はべらせてやがったのか?」「はべらせる言うな」「でも、事実だろうが」
ボクのコーヒーは、半分以上減っていた。
「まあな。二人の他にも、パソコンが詳しい萩原さんに、アシスタントをしてくれた山口さんと大野さん。それに、イリヤってフランスからの留学生も・・・」
「ハーレムか? ラノベか? 何そのご都合主義の超展開? ないわ。駄作、マジ駄作っしょ?」
佐藤は完全に、真夜中のゲーム板(スレ)モードに突入していた。
「まあ実際、オレもそう思うよ。でもまあ、女子高生が、友達を誘って漫画を描こうってんだから、そうもなるだろ?」「マ、マジか?」
その時、コンビニのドアが開いて、女子高生が二人、入って来た。
「オ、オレも漫画、描こうかな?」
「あれ、お兄さんじゃないっスか?」「コンビニで、お昼ですか?」
入ってきたのは、原田妹と市川さんだった。