現実という名の絶望
「結局、どうなんだ? ボクは、夜吸さんのコトを酷いヤツと思っていたケド、ひょっとして、ボクの方が酷いヤツなんじゃないのか?」
「ボクは原田妹や市川さんに、正当な報酬を渡せてないでいる。彼女たちが受け取るべき報酬は、カレーとか、ハンバーガーとか、中古パソコン程度のモノでは無いハズだ」
「漫画は、描くのもハード。ストーリーを生み出すのも、楽じゃない。それなのにボクは、彼女たちの貴重な青春をかなり浪費してしまっている」
「普通の漫画家と契約した場合、ボクは到底、漫画家が要求する金額を払えない。でもボクは、彼女たちに相当長い時間、漫画を描いてもらっている」
「アフィリエイトで儲けるのだって、いくらになるのかも解らない。例え金になったとしても、それって元々、彼女たちが自分の魅力で得るハズの金を、ボクがせしめてるだけじゃないのか?」
「これじゃあまるで、酷いブラック企業じゃないか? いや、酷いブラック企業ですら、もう少しは何とかなってるんじゃないのか?」
「税金の支払い、経理、他の会社との付き合い、何一つ、出来てないじゃないか?」
「今は彼女たちが、女子高生だから何とかなっている。でも、彼女たちだって、永遠に女子高生では無いんだ」
「どうする? このままじゃあ、ネット漫画雑誌の運営を続けて行けなくなる」
「夢を見せておいて、現実を見せ、絶望に突き落とす・・・コンビニで、ボクが言ったセリフだ。今のボクは、現実が絶望なんだ」
その日、いつもの布団の中は、絶望で満たされていた。
朝まで、一睡もできなかった。
けれども、結論も、改善方法も、良いアイデアも、何一つ浮かばない。
「少しずつ・・・でも、前に・・・」
ボクは、いつの間にか眠っていた。
目を開けると、そこには原田妹の顔があった。
「お、お兄さん・・・なんか、あったっスか? うなされてたっスよ?」
「あ・・・ああ。ちょっとね」
「目の下、クマ出来てるっス」「うるさい・・・」
「え?」「出てってくれないか?」
「はあ、今日は漫画を・・・?」
「出て行けッ!」
原田妹は、ボクの頬を平手でおもいきりひっぱたいた。
「あ~あ、やっちまったなあ」
ボロアパートから、足音が遠ざかって行った。
「仕方ないか・・・オレ、元々ニートだし・・・」