企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)037話

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愚かな賢者

コンビニのフードコートにいたのは、IT企業からの漫画依頼を仲介した男だった。

 

「お前さ、ネットでリアル割れしながら、商売してんだな?」

男は、コンビニご自慢のフライドチキンを、引きちぎる様に喰いながら言った。

「ま、かく言うオレも、別に隠しちゃいねーケドよ」

 

「ボクに関しては、ネット漫画雑誌の編集の欄に、本名も載せてますからね。住所も知らべようと思えば、調べられるでしょう」

ボクの顔は一応は、平静を取りつくろった。

 

「ちなみにあなたには、本名は聞かない方がいいですか?」

仲介者とは言え、クライアントの名前も知らないとは、言えなかった。

 

「いや……ホレ、名刺だ」

男が差し出した名刺には、『夜吸 数見』とあり、『KAZUMI-YASUI』と、ルビが振ってあった。

本名にしては相当珍しい名前であり、偽名なのかと思った。

 

「お前、名刺は?」「え? ……持ち合わせてません」

ボクがそう言うと、夜吸氏のサングラスに隠れた目が、血走った。

「あのさあ、ビジネス舐めてんの? コンビニに行くときだって、外出するなら名刺くらい持っておけよ」

 

「ス、スミマセン」ボクは謝ったが、実は名刺はまだ作ってなかった。

「まあいいや。ところでお前んトコ、社員に給料とか払ってんの?」

「いえ、雑誌を運営してるのは、ボク一人です。漫画家とはそれぞれ、契約を……」

 

「なんだ、お前もキレイ事を言ってた割りにゃ、やるコトやってんじゃん」

ボクは夜吸氏の言っている意味が、理解できなかった。

 

「最近イキがって、フリーランスとか名乗ってるヤツとかいるケドさ」

夜吸氏は、肉が無くなった骨のみを、ゴミ箱に放り込んだ。

 

「ほとんどのヤツは、企業の後ろ盾もねーし、交渉力もからっきしなモンだから、いいカモだよな。市場価格より、大幅に安い値段で仕事を受けやがる」

ボクは、夜吸氏の言葉に、憤りを感じたが、実際にやっている事は同じだった。

 

「まあ、その辺はオレらにしたって、もっと上にいる連中からすりゃあ、同じなのかもな。他人を犠牲にしてのし上がる。バカを騙して金をせしめる。それくらい、平気な顔してやんねーとな」

サングラスは、コンビニの前を走る車の、ヘッドライトやテールランプを映していた。

 

「お前さ。人を絶望させる、一番いい方法って知ってるか?」

夜吸氏は、おもむろに言った。

「残念ながら……知ってます……」ボクは答えた。

 

「へぇ、どんなだい?」

「一旦、夢を見させてから、現実を見せ、どん底に突き落とすんです」

 

「そっか……お前、この仕事、向いてるのかもな」

夜吸氏は、コンビニを出て行った。

 

世の中、『愚かな賢者』で溢れていた。