ボクのボロアパートは、ボロではあるものの、大家さんがネットで動画を配信されているくらいITに詳しく、ネット環境は整っていた。
「じゃあ萩原さんは、ボクのデスクトップ使って」「了解です」
萩原さんは、素早い手つきでキーボードを叩き、パソコンの内部情報を確認する。
「このコ、お兄さんの自作ですよね。一応タブレットは刺さってるけど、CPU性能もビミョーだし、グラフィックもオンボードなんですね?」
タブレットは、ボクが一瞬で挫折した名残だった。
「グラボも増設しようかと思ったケド、ロープロファイルしか入らなくてさ」
「それでも、オンボードよりかはマシだと思いますケド?」
「た、確かに」「二人とも、日本語喋るっス」
話しに置いてけぼりにされた原田妹が、なぜか怒りだした。
「今回ちゃんと漫画が納品されれば、まとまった金額が手に入ると思うんだ」
「それじゃあ、買い出しにいきましょうか?」「そ、そうだね」
萩原さんは、ボクの意図を察していた。
「それじゃあ電機街まで、買い出しに行ってくるよ」
「あ、あたしも付き合うっス」「いいよ、自分の漫画を進めてくれれば」
「今ちょっとスランプっス」「ええ!?」
原田妹も、強引に付いてきてしまった。
「けっこう混んでるな」「タピオカに、唐揚げ、美味しそうっス」
「流石に今回は勘弁な。PCパーツはけっこう高いんだ」
「しゃーないっスね」強引に付いてきた娘は、渋々納得する。
「お兄さん、予算っていくらくらいですか?」萩原さんが言った。
「そうだな。できれば1万以内に抑えてほしいケド、頑張って2万」
「そうですか? なら、このケースを買いましょう。これなら、ロープロじゃなくても入るし、ある程度の拡張もできますよ」
「確かにロープロのグラボって、割高か性能がイマイチとかあるしな」
「お兄さん、CPUこれ行けますよ」「廉価版じゃないのが、この値段?」
萩原さんに言われた通り買っていたら、二万ギリギリになってしまった。
ボロアパートに帰ると、市川さんだけが漫画を描いていた。
「お兄さん、ずいぶんとたくさん買ってましたね?」
「ああ、ついね。自作マニアが二人も集まると、こんなモンさ」
すると、パーツの箱を開封しながら、萩原さんが言った。
「お兄さん、これわたしが組みます」「え? でも・・・」
「わ・た・し・が・組みます!」「うう・・・はい」
萩原さんは、さっそく前のパソコンの蓋を開け、マザーボードを取り出した。
慣れた手つきでCPUを外し、新たなCPUに交換する。
「は、萩原・・・お前パンツ見えてるっス」「うっさい、今忙しい」
原田妹の指摘を、萩原さんはガン無視した。
「うっさいじゃねえっス。ホラ、股閉じろや、股っス」
「あーもう、気が散る。お兄さん、原田押さえてて」
萩原さんは、パソコンの自作になると、周りが見えなくなる様だ。
ボクは言われた通りにした。
「アタシ押さえてどうするっス。堂々と見てんじゃねえっス」
「もう、お兄さん、ダメでしょ」
ボクの目は、市川さんの可愛らしい手で塞がれた。