企業漫画が読まれないワケと、企業が活用すべき漫画の新たなスタイルを提示

エイチ・ヒノモトの企業漫画とラノベのブログ

報酬も無いのに、ネットで漫画を1000ページ以上描いた男が、企業漫画のコンサルティングをしながら、ブログでライトノベルを連載してみた。

漫画好きなニートが、自らネット漫画雑誌を立ち上げてみた。(仮想)100話

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卒業

「ええ!? 山口、漫画辞めちゃうの!?」

大野さんは、親友の言葉に驚きを隠せない。

 

「そうね、もう高校二年の二学期だし、来年は大学受験だからね……」

山口さんは少し寂しそうにしながらも、ドリンクに手を伸ばす。

 

「そっか、やっぱ原因はお兄さんなんだ……」

「ブフォ!?」

 

飲んでいたタピオカドリンクを吹き出す山口さん。

彼女の周りから、猫が一斉に逃げ出した。

 

「な、何を言っているのかしら、このコは……!!?」

慌ててハンカチで、服やテーブルを拭く山口さん。

「聞いて無かったの? 理由は大学受験って……」

 

「山口もさ、お兄さんのコト好きだよね?」

「なな……なにを言っているのかしら、このコは……お兄さんは、原田と付き合ってるのよ!?」

 

「ずいぶん、慌ててるね」「慌ててないわよ、別に……」

山口さんも、大野さんがたまに放つ、真意を射抜くような言動には適わない。

 

「まったく……何でわかっちゃうかなあ。顔に出てた?」

「そうでも無いケド……古い付き合いだしね」

 

「アンタとは、幼稚園の頃からいっしょだったしね」

「でも、お兄さんが好きなのは、わたしだけじゃなくて……」

 

「市川さんと、萩原も好きだよね」

大野さんは、言い切った。

 

「勉強も運動もぜんぜんなクセに、恋愛については何でそんなに敏感なのかしら?」

「さあ。わたしも、お兄さんが好きだから……かな?」

 

「ええ、アンタもなの!?」

驚きっぱなしの山口さん。

 

「わたしの場合は恋愛ってより、あんなお兄さんがいればなあ……って感じかな。漫画のネームも、真剣に見てくれたし」

 

「後輩の前で、泣いたんでしょ、アンタ」「う、うるさいなあ」

大野さんは、太いストローでタピオカドリンクをすすった。

 

「でも、せっかく漫画も描けて、山口に追いつけるかって思ったのに……」

「アンタも、成績だいじょうぶなの?」

 

「わたしは元々、勉強も苦手だから、大学もそんな上の方狙ってないし」

「将来の目的って……アンタには、無いわよね」

 

「それが、できれば漫画家を目指してみようかって思ってる」

「ええ……漫画家を!?」

 

「わたしの場合、4コマだケド、やっぱ漫画描くのって楽しいんだ」

「そっか……なんか最近、アンタも変わった気がしてたのよね」

 

「でもまず、漫画を完成させないと」

「そうだね。スケッチ見せてみ?」「はい、こんなだケド……」

 

「まず、遠近法とか、パースの勉強しないとね……」

「ええ、そ、そんなぁ~!?」

 

漫画を描く人間にありがちだが、キャラを描くのは好きでも、背景を描くのは苦手で嫌いな人も多いのだ。

 

それから山口さんは、ボクに漫画を辞める旨を伝えて来た。

律儀で真面目な山口さんらしく、2ヵ月分の漫画のストックをボクは受け取る。

 

「今まで、ありがとう……山口さん」「はい……」

彼女の表情は寂しそうだったが、未来へと向かう決意も感じられた。