「オレのサッカー漫画は、主人公の少年が自分のクラブチームに、色んなキャラをスカウトしてくるのも売りの一つだ」
佐藤は言った。
カリスマ美容師ドリブラー
「つまり、どれだけ個性的なキャラを仲間に加えられるかが、かなり重要になってくる。いずれは自分のチームに入って、サブ主人公クラスにしたいところだからな」
ボクも、それに付け加える。
「そ、それじゃあ、採用していただけるのですか?」
池田さんは、真剣な表情で言った。
「ああ、ありがとう、池田さん」
佐藤は素直にお礼を言っていた。
「だがな、佐藤。アイデアは良いと思うが、カリスマ美容師のドリブラーを、どうやってストーリーに絡めていくかだな?」
「う~む。単純に、カリスマ美容師でした……じゃ、面白味に欠けるってコトか? どんな演出が良かろう?」
「あの……それも、少し考えてあるんです」
池田さんは言った。
「どんなの?」「聞かせてくれ」「は、はい」
佐藤の要求に、池田さんは僅かに頬を赤らめる。
「このドリブラーの人って、元々かなりイジメッ子じゃないですか」
「イジメっ子……というか、ヤンキーか不良だケドな」
「それでですね。このイジメられてそうで、冴えない感じのクラスメイトに、髪を切ってやるから500円よこせって要求するんですよ!」
「でも不良にしては、請求金額が安くないか?」
「で、でもですね……佐藤先生。このドリブラーのコは、本気でカリスマ美容師を目指してるんです」
「お、おう?」佐藤先生は、池田さんの勢いにひるむ。
「自分の美容師としての腕は、まだまだだと解かっていて、500円という金額を請求したんです」
「それで、どうなるの……池田さん?」
「はい。周りには、ドリブラーのコの仲間の不良たちも、冴えないクラスメイトを取り囲んでいます。彼らにしてみれば……」
「そ、そうか! なる程」佐藤が叫んだ。
「つまり、周りを取り囲む不良にしてみれば、このドリブラーは冴えないクラスメイトに、髪を切るというイジメをした上に、金銭まで要求してると思ってるのか?」
「はい……ですが、実際に仕上がった髪型は最新のヘアスタイルで、それがたったの500円なんです!」
「最初は泣きそうだったクラスメイトも、ハッピー笑顔になってるワケだ」
佐藤の表現は古臭いが、話しは面白く意外性に富んでいた。
「うん。おもしろいな。さっそくウチで、ネームに仕上げてみるか?」
「そうだな。池田さんも、コイツのアパートに来るか?」
「さ、佐藤先生と……社長のアパートにィィッ!?」
真っ赤な顔の、池田さん。
「ふ……ふえええぇぇえ!!?」
彼女は、かなり想い入れが激しいコだった。