クラブ代表
「なあ、ホントに大丈夫なんだろうなあ?」
佐藤は翌日になっても、相変わらずだった。
「大丈夫ですよ、先生! わたしが付いてますから」
「う、うん。よろしく頼むよ、池田さん!」
どちらが高校生で、どちらが社会人かわからない。
「それじゃ、乗ってくださーい。わたしの車、日本のオフロードね。安心安定安全ね」
巨漢のグンナーさんでも乗れる車は、日本人の三人が乗っても余裕の広さだった。
「それじゃ、お願いします。グンナーさん」
「オーケー、いきまーすね」
軽快に走り出す、四輪駆動車。
街中ではさすがに燃費が悪いのだろうが、雪道には強そうだ。
「グンナーさんって、サッカーは解かるんですか?」
かつてはプロのスノーボーダーで、今はスノーボードのデザインを手掛けるグンナーさんに聞いてみた。
「もちろーんね。わたしの国、スウェーデンもサッカー人気ね。わたしの名前、昔イタリアのミラノで活躍した、トリオの名前が元ネタね」
元ネタの意味が解ってるのかは不明だが、グンナーさんはサッカーに詳しかった。
「そ、そういえばスウェーデンって、個性的なサッカー選手が多いですよね」
意外にも、佐藤がグンナーさんに話しかける。
「おー、そうね。ドレッドヘアだったり、空手家だたーりね!!」
「あー懐かしいなあ。オレがサッカーやってた頃に、活躍してた選手だ」
佐藤は、ほんの数週間程度のサッカー部歴を自慢した。
車の中は、グンナーさんと佐藤のサッカー談義で盛り上がり、ボクと池田さんはあまり話すことなく、隣の市へと入った。
「このスタジアム……プロサッカーチームの、スタジアムですよねえ?」
「そーね。ここ、もちょっと行ったトコに、練習場とクラブハウスあるね」
ボクたちは、巨大なサッカースタジアムを横目に、クラブの練習場へと向かう。
車は、大きなアスファルトの駐車場で留まった。
「佐藤先生、すっごくおおきな練習場ですね。わたし、初めてみました!」
興奮気味に、スマホで撮影を始める池田さん。
「オエエ……オレ、調子悪いし、帰った方が……」
車の中での饒舌からは、考えられないくらい落ち込む佐藤。
「ほら、別にお前が話すワケじゃないんだから、行くぞ!」
クラブハウスまで歩くと、ボクたちは二階の来賓室へと通される。
長い机にソファーが迎え合わせに設置され、ボクたちはそこに座る。
グンナーさんだけが、クラブハウスの方へと歩いて行った。
「おー、キミたちが社長から話のあった、例の漫画家のコたちか」
現れたのは、クラブチームのジャージを着た、おじさんだった。